ありがとう、そしてさようなら

 VT250FEがたった今、ワゴン車に積まれて私の元から去った。

 5年前、職場のPCからヤフオクで、29,800円で即決して入手したバイク。最低限走れるように直しつつ、雨の日も風の日も炎天下でも台風でも雪の日でも走った。5年で走行距離は3万キロ以上だが、通勤に使っていた数年間、途中でエンコすることは一度もなかった。

 それなりに手は入れていたけど、いつ壊れるかわからないから遠出はほとんどしなかった。ツーリングらしいことは1回もしていない。スーパー、コンビニ、ホームセンター、隣町、たまに用事で都内や横浜。大した距離は走らないが、レジ袋を両脇にぶら下げたり、段ボールを積んで走った。布団や棚やビール缶2ケースも運んだ。ひたすら日常の下駄として使っていた。

 エンジンは下から上まで気持ちよく回るが、今考えると曲がらない、止まらないバイクだった。それでも新車の250をコーナーでインからブチ抜き、中型スクーターに信号グランプリで勝ち、S字コーナーならば400と張り合えた。そしてよくコケた。火花が散って血濡れになったことも。レバーは4本折り、ミラーは5本割った。バンクセンサーとバーエンドもいつの間にかどこかへ吹っ飛んだ。最高速試したらメーターワイヤーとメーター球が切れた。

 今は機関上も外観上にも不具合ないSRXがあるから、別に寂しくはない。VTはハッキリ言えば思い入れのない、下駄と割り切って履き潰したバイク…だから寂しくはない。

 でも恩田君、キミはとてもいい子だった。ありがとう、そしてさようなら…