妹とクラシックコンサート

以前献血した際、献血ルームにコンサートのチラシがあったのでチケットを予約購入。昨日六本木のサントリーホールへ妹2人と行ってきた。日本赤十字社 第43回 献血チャリティーコンサート。

会社の同僚のクラシックファンの人に聞くとサントリーホールは音響がいいとのことで、P席というオーケストラ後方にある2階席はいい音を安く聴ける穴場なのだそうだ。なので2,000円と格安のP席を3枚買った。本来は姪2人を勉強のために連れて行こうと思ったのだが、どうも興味がないらしい。たまたま富山に単身赴任している妹が休暇で帰省するとのことで、妹2名と出かけることに。兄妹3人でどこかに出かけるというのは初めてかもしれない。

電車賃と帰りのメシはおごるという約束で電車で南北線六本木一丁目駅へ。これまた同僚から「ホールみたいな建物を想像すると迷いますよ」と言われていたので、森ビルの中に入るとその敷地内の中庭みたいなところにいきなり出入口があった。ビルに組み込まれた感じで確かにパッと見で音楽ホールとわかる造りではない。開場40分前と早く着きすぎたので、その入口の向かいにあるスープストックで小腹を満たし、ビル内のドラッグストアや文具店でヒマを潰した。

妹2人と一緒にぶらついてて思ったこと。妹と言ってもアラフォーなのでやはり経済観念とかしっかりしてるなぁと。ドラッグストアでハンドクリームを買うのかと思えば試用品のチューブだけで手を潤し、缶コーヒー買おうとしたら「ウチに帰ればいくらでも飲めるでしょっ!」って怒られた。散財しまくりで貯金がゼロの兄、ちょっと反省。

肝心のコンサートだが、オーケストラの後方の席はなかなか面白い。1曲目のR・シュトルラウス「交響詩ドンファン」は初っ端からド派手な曲なので迫力ある。何よりも指揮者の沼尻竜典の顔が見えるのが興味深い。沼尻がコンマスや各々の奏者に合図を送っているやり取りがよく目に見える。パーカッションに近い位置だったので、打楽器系の音がちょっと前面に出すぎていたけれど、音自体はほどよく近いのでよかった。

でもヴァイオリンやチェロ協奏曲のようなステージ前方にソリストがいるタイプの曲だとやはり音が聞こえづらい。とはいえオケの音に負けない音色を出すソリストって、やはり選ばれた人なんだろうなと実感。肝心の妹たちの反応といえば、上の妹は割と楽しんでいるようだったが、下の妹はひたすら眠そうだった。「イビキ立てなけりゃ寝ててもいいぞ。音を聴きながら心地よく寝るのも音楽の愉しみ方のひとつだ」と言っておいた。静かにして他の人の迷惑にならないんだったら、落ち着かずにソワソワしてるよりはその方がいいだろうと私は思う。

つうかソリストが独奏してるときに限ってゴホゴホ咳き込む奴は何なんだ? 生理的に仕方ない場合もあるが、せめてオケが大音量で鳴っているときにしろよ。見るとそういうときには咳き込んでないし。バカなの? あと演奏終わって必ず「ブラボー」叫ぶ奴。お前「ブラボー」叫びたいだけやろ。もう。

と、悪態をついたところで本題に。遠藤真理というチェリストが入りチャイコフスキー「ロココの主題による変奏曲」。オーケストラを小編成にしたり、チェリストのお立ち台を用意する準備があって、こういう裏方的な動きがよく見えるのはP席ならではで面白い。逆にチェロがすごく遠くておまけに後ろ向きなので音は小さく、発達した僧帽筋上腕二頭筋はよく見えても肝心の演奏が見えないのは難点だけれど。バロック調の曲だけど、私にはちょっと冗長すぎてあまり面白くなかったかな。チェロは門外漢なのであまりわからないが、テクニックだけで言えば良かったかな、と。長い音符のフラジオレットの音がキレイだったな、という印象しかなかった。

ベテランの前橋汀子に変わってメンデルスゾーン「ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 作品64」。赤いドレス引きずって歩いてくるところから威風堂々で、演奏が始まるとグイグイとオケを引っ張る。弓でヴァイオリンだけじゃなく楽団員の音から根こそぎ引っ張っていく感じがした。前橋のソロになると指揮の沼尻もおとなしく手を下ろして「拝聴」している雰囲気。だからと言って前橋が好き勝手弾いているわけではなく、指揮者やコンマス、ハープ奏者などに目や弓の構えで合図を送って調和を取っていることがわかり、全体としての音作りを重視していることが見て取れた。なるほど、さっきのチェロに足りない部分はここかもしれない。誰にも有無を言わさぬテクニックとカリスマ性。「協奏」曲というものがよく理解できた演奏だった。前橋がステージを後にする際、終始ヴァイオリンの伴奏を務めたハープ奏者の肩を叩いて労をねぎらったあたりなど、ベテランの余裕を感じさせた。

ソリストが抜けて再び大編成になりR・シュトラウスの組曲「ばらの騎士」。前橋がいなくなったら沼尻がイキイキとタクトを振った。途中4拍子や3拍子に変化するにぎやかな曲。最後のシメは小さな木製の楽器をブンブン回転させてガリガリ鳴らしてたし(ハンド・ラチェットって言うらしい)、総員大騒ぎな感じで楽団員も楽しくやっていそうな雰囲気があった。演奏後の鳴り止まない拍手に沼尻が一部の楽団員に合図を送って起立させ、観客にさらに拍手を送るようアピールしていたが、あれは功労賞なのかな。私も各曲演奏中に「おっ」と思うフレーズをハープやオーボエ、ホルン、コンマスのヴァイオリンが演奏していたので、都響のレベルは高かったと思う。

しかしP席って音楽をやっている人には面白い。一人だけパイプ椅子のホルンの人がいて、妹が「いじめ?」って言ってたし、出番の少ないチェレスタの人が自分の番に来る前に緊張でプルプル震えているのまで見えたし。妹に感想を求めると「トライアングルの人が面白かった」と言っていた。まあ一番近かったから音はデカく聴こえたよ、確かに。

帰りに乗り換えの王子駅で下車して居酒屋で妹におごって帰宅。まあ私も別段クラシックファンでもないのでコンサートのことはほとんど話さず雑談。でもたまにはこういうのもいいよね。

おまけ。地下鉄のポスターでマツコ・デラックス発見。