ヴィオラの駒を削る

昨年9月に購入したヴィオラであるが、夏の発表会の合奏にあれやこれやと引っ張り出されることになったので最近はヴァイオリンと半々ぐらいの割合で弾いている。基本的にヴァイオリンと構造が一緒なので持ち替えはそんなに苦ではないのだが、やはりヴァイオリンよりは弾きにくい。

まず大きさが違うのでヴァイオリンより指の間隔が広くなる。とはいえ比率が一緒なので目視で確認しておけば案外音程は狂わない。だが問題は小指。結構伸ばさないと音程が取れない。特にC線(指から見て一番遠い弦)がかなりキツイ。どうやっても教則本のように小指でC線を押さえながら隣の弦を人差し指で押さえられない。仕方ないのでまた風呂に浸かりながら痛みに耐えて関節を伸ばす苦行を再開中。

もう1つヴィオラで違うのは音の鳴り出し。弓で弦をこすってから音が鳴り出すまで、ヴァイオリンに比べコンマ数秒か遅れてしまう。先生によると弦が太い分、弾くためのエネルギーが必要なので鳴り出しが遅くなるようだ。乗用車とトラックの違いみたいなものらしい。なので弓は早く、力強く弾かなければならない。これが結構大変。2分音符や4分音符なら何とかなるが、細かな刻みについては全く歯が立たない。同じフレーズを弾いたら1.5倍ぐらい体力を使う。

しかし恐らくこれらは楽器の調整である程度は解決できそうな気がする。特に弦から胴に音を伝えるためのが怪しい。何せこの手の弦楽器はフランス製かドイツ製の駒を職人が手で削って調整するのが「普通」であるが、この駒に至ってはノーブランド。はっきり言えばオモチャだ。しかし今月は出費がものすごく多かったため、工房へ調整に出せるお金がない。

どうせオモチャなら壊したって構わん。思い切って自分で削ってみた。ネットで弦高を調べてみたらヴィオラの場合、指板から一番高いところでA線4.5mm~C線6.5mmぐらいらしい。定規で測ってみるとA線は4.5mmでD線は5.0mmだったが、C・G線がともに6.5mmだった。間を取ってG線を6.0mmにすればよさそうだ。使うのはごく普通のカッターナイフとヤスリ。弦を緩めて駒を外した。なおこの手の弦楽器の中には魂柱という直径5mm程の丸い木の棒が入っているのだが、これは裏板と表板の間に糊付けもせずに挟んであるので、駒を緩めると弦の張力がなくなって倒れやすくなる。倒したら専用工具がないと立たせることができない。数ミリ動かしただけで音が変わってしまうシビアな部品なので絶対素人は倒してはいけない。私だって倒したら元の位置に戻せる自信などない。

少しずつ慎重に削りヤスリで調え、駒を元に戻して試奏。おお、軽い力で押さえられるようになって大分弾きやすくなった。心なしか音の出だしもよくなった気がする。演奏者の腕が悪いので正確な評価はできないが、買ったときに比べてエイジングされたせいもあるのか低音に深みが増してきたようだ。やっぱり小指はキツイけれど、これならカラダの方を改造すれば何とかなりそうだ。

でも楽器に合わせてカラダをどうにかするって、まるで第二次大戦の軍人のような発想だ。うーん、もっと肩・首周りの脂肪を落とさないとダメだなぁ・・・