不自由な暖房器具

前回入手した火鉢だが、使い勝手が違うことがわかってきた。前のものより微妙に火が消えやすい。前の火鉢は持ち運び用の穴が開いていたため空気の流入量が多かった。今度の火鉢は上方からしか空気が供給されないので、空気の通り道を考えて炭を配置しないと火の勢いがすぐ弱くなる。ただし逆に炭の持ちは良くなったので、多少炭は節約できるかもしれない。いや、その分寒いが。

ガスや灯油は火を着けてしまえばあとは勝手にガンガン燃えるが、炭という固体を気化させるにはそれなりのエネルギーが必要になる。炭は3本以上が赤く光っていないとすぐ消える。互いに熱を補完し合わないと燃焼に必要な熱量が得られないからだ。

なので初回の火起こしがすごく大変。以前は片手鍋の底が網状になった炭熾しという器具を使ってガスコンロで炙って点火していたが、最近のガスコンロは温度センサーがあるので使えない。なので今はカセットガスバーナーで炙る。数分ゴーッと炙れば赤くなるが、ちょっと赤くなったぐらいではダメ。3本以上の炭の端が十分赤くならないとすぐ消える。それだけで5分近くを費やす。ただし火消し壷で消した「消し炭」を使うとその手間は若干省ける。一度赤く熱した炭は多孔質になっているので空気を取り込みやすく火が点きやすい。

バーナーでだいたい赤くなってきたら今度はウチワ。ひたすらあおいで酸素を補充し、赤火の面積を広げてゆく。これも5分ぐらいはあおいでないといけないだろう。落着いてくると微かに青い炎が炭の隙間から漏れてくるが、そこで終わりではない。赤いところが広がったら裏返して全体に熱が行き渡るよう配置を考える。でないと火の勢いが弱くてまるで暖かくならない。配置を変えたらまたあおぐ。ただしデリケートにあおがないと灰が飛び、たまに弾けて火花が飛ぶ。火鉢の周辺は灰と焦げ目だらけだ。

そんなことをしていると30分1時間すぐ経過する。その間、他の暖房器具がないと寒さに打ち震えることになる。特に火鉢が冷えているととてつもなく時間がかかる。だから外出時には赤くなった炭を1つ2つ灰に埋め、種火として残しておく必要がある。その状態で持つのはせいぜい20時間程度だが。

このように苦労して火が落着けばようやく暖が取れる。だが油断してはいけない。燃焼すると炭が減ってくるので適度に補充しないとならない。補充しすぎると恐ろしく熱くなるし、放っておくと消える。もちろんその度に炭の配置を変えないと火の勢いが急激に衰える。なので時々何かに夢中になって火鉢の存在を忘れると、寒さに震えていることがある。とても面倒。

一番困るのは灰が散ること。最近PC関係がみんな黒くなったので目立つ目立つ。その度にハンディモップでお掃除。

何で私はこんな不自由な暖房器具を使っているのだろう…(ヒント:貧乏と餅)

WordPressのカレンダー

このブログの右にあるカレンダーは AJAX Calendar プラグインを利用させてもらっているのだが、最近バージョンアップしたら見た目が若干変わって記事を書いた日が見えづらくなった。色々試行錯誤しながらテーマ編集でスタイルシート (style.css) に以下を記述。バージョンアップ以前よりも統一感のあるデザインにできた。

#wp-calendar {
    text-align:center;
    font:normal 13px/16px Georgia, "Times New Roman", Times, serif;
    }
/* リンク部定義 */
#wp-calendar td a {
    display:block; /* ブロック要素(文字だけでなく要素ごとクリック可に) */
    font-weight:bold; /* 太字 */
    color:#000;
    background:#d7d0b9; /* リンク背景色 */
    }
/* リンクマウスオーバー */
#wp-calendar td a:hover {
    color:#73794f;
    background:#e4ddc6; /* マウスオーバー時背景色 */
    }
/* 前月・来月リンク修飾回避 */
#wp-calendar #prev a {
    text-align:left; /* 左寄せ(block要素がないと無効に) */
    font-weight:normal;
    background-color:transparent; /* 背景色なし(透過) */
    }
#wp-calendar #next a {
    text-align:right; /* 右寄せ */
    font-weight:normal;
    background-color:transparent;
    }

 
うるさすぎず、控えめなマウスオーバーに自画自賛。でも未だCSSってなんか慣れない…

空気を読み取ること

昨日はクリスマスの演奏会に合わせたレッスン。バッハのG線上のアリアのリズムパートもヴァイオリンで合奏することになった。譜面自体はほとんど4分音符なので、ニ長調の#2つと臨時記号にさえ気をつければ割と簡単。だが先生が第1ヴァイオリンを弾いて一緒に合奏したらまるでタイミングが合わない。正確なリズムを刻もうとするとどんどん乖離する。おかしい。

実を言うとこれは先生がズレていた。早いパッセージの複雑なフレーズ、つまり「歌う」部分のあとがわざとディレイ(遅延)されていたのだ。次の小節が始まるのにコンマ何秒か遅れが生じ、その遅れを取り戻すためにその小節を早送りにして元のリズムに戻す。竹や柳のようなものをブンブンと振ってリズムを取って、時折多めに反らせて勢いよくビュンと戻すような感覚。時間軸のシーケンスは正しくないが、音楽のリズムとしてはこれが正しいそうだ。先生に「相手の弓の溜めを見計らってから、次の小節を弾き初めなさい」と言われ、戸惑いながらも注意深く音を聞きながらタイミングを合わせるとなるほど、心地の良い音が鳴り始めた。ゆらぎというか、ゆっくりと深呼吸をするような。演奏する側は神経を研ぎ澄まさなければいけないけれど、音は湖上の小舟で昼寝をするようにゆったりと聞こえるようになった。どうやらカノンに比べ、G線上のアリアは相手の演奏を聴き取りながらフィードバックするというスキルを要求するようだ。

機械ではこうはいかない。練習用の音確認にスコアをPCで打ち込むことがあるが、ベタ打ちだと正確すぎて逆に違和感を感じてしまう。一応数値的に微調整がいくらでも効くので人間らしい演奏を再現することも可能だが、そのためには人間のゆらぎの感覚を数値に置き換えなくてはならない。一時期流行った「1/fゆらぎ」とか「ファジー」というやつだ。だがそれを方程式的にやれば「音楽」として成り立つわけではない。人間がファジー過ぎるからだ。実際演奏者というのはその日の気分やその場の空気でいくらでもテンポや間合いを変えてしまう。ジャズなどは即興音楽なのでその最たるものではあるが、クラシックだって演奏するたびに実は違っている。なので機械がどう進化しようが、聴く側が人間であれば結局人間が微調整を施さないとならない。

以前ラジオでDJが「カセットテープがなくなってバンドのデモテープにグルーブ感がなくなった」という話をしていた。機械的なことを言うとそれはモーターの回転ムラやテープ、駆動ベルトのブレに起因するワウ・フラッターという現象で、再生音が劣化しているに過ぎない。しかし、そのゆらぎが人間にとって心地の良い音に聞こえてしまうこともあるということらしい。実際「グルーブ」という言葉はレコードの「溝」が語源で、音声を原始的なハードウェアに置き換えたが故の劣化再生音のこと。しかし、その45回転や33と1/3回転のうねりが何ともいえないドライヴ感を生み出して踊りだしたくなるようなリズムを生み出すらしい。音楽理論自体は数学的ではあるが、実際のところなぜ長調に比べて短調はもの悲しく聞こえるのかとか、よくわかっていないことも多い。劣化音声が必ずしも人に安らぎや感動を与えるというわけではないが、人の心に訴えかけるには時には正確な数字から離れなくてはいけないようだ。

その昔、ジャズを聴き始めた頃にセロニアス・モンクのピアノソロを理解しようと何度も繰り返して聴いていたことがある。調子っ外れでリズムがもたついたり早くなったり、どう聴いても下手糞にしか聞こえないモンクがなぜジャズの巨人の一人に数えられるのか解らなかったからだ。試しにリズムが遅れたところでカウントを始めてみたところ、何小節か先で元のリズムに戻っていることを発見した。偶然ではなく何度も遅れたり戻ったりを繰り返している。この人はわざとこれをやっているのだ。それが解ったことで背筋がゾクゾクッとした。しまいにゃ涙まで出てきた。

私のベスト盤の一つにセロニアス・モンクのブリリアント・コーナーズがある。ソニー・ロリンズなどのメンバーが連ねているセッションなのだが真剣に聴くと緊張感がハンパない。リーダーのモンクが叩き出す「キョキョキョキョン」という短二度のフレーズから、他のメンバーが真剣に彼の音を読み取って演奏にフィードバックしようという空気がビンビンに伝わってくる鳥肌もののアルバム。私もごく稀にしかターンテーブルに乗せないアルバムなのだが、こないだのレッスンで久々にその空気を感じてみたくなった。

…あれ? どこにしまったか見つかんないや。

created by Rinker
¥900 (2024/04/25 09:56:40時点 Amazon調べ-詳細)