地獄のメカニカルトレーニング

こないだヴァイオリンの発表会だと思ったらもうクリスマス。最近練習をサボり気味だったのだが、そろそろ1ヶ月前を切りそうなので本気を出さないと。

と、思って先生からもらった譜面を開いたら全然弾けない。というか私は刻みがちゃんと弾けないことに今になって気が付いた。今回はヴィオラでバックの刻みだけだから~、と思って甘く見ていたら大ヤケド。これはマズイ。ちょーヤバイ。激ヤバ。

「刻み」というのは弓を小刻みに動かして音を短く切る、主にリズムパートで使われる奏法。譜面上では連続した8分音符の上に点(・)がつけられるが、実際はその半分の16分音符の長さに切って音を鳴らすことになる。なので弦の上でポンポンと弓のバネを使って規則正しくバウンドさせないといけないのだが、これがまるで正確にできない。かなりヤバイ。鬼ヤバ。

一度譜面のテンポ(♩=115)で弾こうとして絶望的な気分に陥ったが、気を取り直してまずは右手だけで練習。10分ほど機械的に「キッキッキッキッ」を繰り返してみた。しかし余計な力を入れて手首を硬くして弾いていたせいで上腕二頭筋が痛くなってきた。こんな状態ではとても1曲を弾ききることなどできない。チョベリバッ。

昔だったら忍耐と精神力でなんとかしたものだが、年を取るとラクをするために頭が使えるようになる。慣性モーメントだの損益分岐点だのあらゆる知識を総動員して理想的な体の動かし方を想像し、筋肉・関節制御の3次元プログラミングを再構築。冷徹なマシーンとなるべく弓の進入角度、速度、力の分散を考えながら軌道修正を繰り返し、ようやく小一時間ほどして譜面に書かれたテンポで刻みが出来るようになってきた(つもり)。

音楽は機械的だと無味乾燥になるけれど、機械的なトレーニングを積まないと表現以前の問題なわけで。弾けないフレーズが出てくる度に何度も針の飛んだレコードのように反復してもどかしい気分になる。私はただ楽しくヴァイオリンで歌いたいだけなのに、なぜこんな辛い目に遭わなければならないのだろう・・・天国への道は遠い。