苦手なG線 その1

G線が苦手だ。バイオリンを真正面から見たとき、一番左側にある弦。最低音が出るところ。初級の第1ポジションじゃどうってことはないが、これが第5以上になるとまるでキレイに響かない。

それもそのはず、低い音を出すには高い音よりエネルギー量を多くしないとならない。人間の耳は音が低くなるほど音を感じにくくなるので、体感的に同じ音量で聞こえている高い音と低い音は、実はエネルギー量に差がある(詳しいことは「デシベル ホン」でググれ)。

スピーカーの高音用のツイーターは小さくても十分鳴るが、低音用のウーファーは何倍も面積を大きくして電流を多く流さないとその高音に負けてしまう。それに高い音から低い音へと同じ音量に聞こえるようにするには比例ではなく、対数的にグラフがグイッとカーブを描くようにエネルギー量をググッと増やさないとならない。オーディオのボリュームの部品に使われる可変抵抗器はそういう風に作ってあるらしい(Aカーブ)。

楽器の場合、低音を豊かに響かせるには本来なら弦を長くした方がいい。同じ太さの弦ならば、単純に2倍の長さにすれば、振動数が1/2になって音程は1オクターブ低くなる。だからピアノだったらアップライトより、やたら長大なコンサートグランドの方が響きがいい。

しかしヴァイオリンやヴィオラは弦が長すぎると腕で抱えきれなくなるから、弦をコイル巻きに太く重くして振動数を無理やり抑えている。だから弦の作りからしてもともと響きが鈍い。そんな弦をハイポジションで弾くと、押さえた指と駒の間、10センチ以下の中で弦を震わせることになる。さらにヴァイオリンはチェロやコントラバスに比べて共鳴胴も小さいし、単純に考えてもいい音で鳴るはずがない。

・・・でも、ヴァイオリン演奏家の巨匠が弾くと、何とも憂いのある深い音色になったりするのだ。物理法則をもねじ伏せる、何か超絶なテクニックがあるらしい。頭でっかちな私はその法則性を探るべく、何度か今まで試行錯誤を繰り返してみたが、今の所どうにもならない。地道に練習を重ねるしかないのだろうが、練習ギライなのでとりあえずG線は避けて通ってきた。そのうちなんとかなるさ、と。