父の戸籍を辿る旅

川崎市役所先週は急遽有休を取り、東京またいで神奈川県川崎市の川崎区役所へ。私の生まれた街に除籍謄本なるものを取りに下道で2時間弱かけてペケジェーで行った。

除籍謄本とは、除籍した地の市区町村で発行される戸籍の記録。要は「ここに本籍があったよ」という過去を証明するもの。戸籍・除籍証明書には抄本(しょうほん)と謄本(とうほん)があるが、抄本が個人の分だけ抜粋してあるのに対し、謄本には一緒に籍に入っていた家族全員分の記録が入っている。もちろん死んだ人や結婚・離婚したりして入ったり出たりしていた人の名前も入っている。なのでこっちが重要。

で、そもそも本籍って住民票と何が違うのかっていうと、本籍は届け出さえすれば住んでいなくても登録できるらしい。なので皇居の住所である「東京都千代田区千代田1番」で登録している人もいるとの事。それに対して住民票というか、住民登録は引っ越したら原則必ずやらないとならない。いま仮住まいに住んでいて、本来なら近所でも住民登録を移さないならないらしいが、せいぜい半年の期間だし、書類発行が面倒になるのでやっていないけれど。

すっかり更地でも実際のところ、何かで戸籍謄本などが必要になると、やはり近所で取れた方が便利だし紛らわしくないので、居住地と一緒という人がほとんどだと思う。なのでウチも現在住んでいる(更地になってはいるが)住所に転籍し、そこが現在の本籍となっている。

今回建替えのため、住宅ローンを借りる際にウチの父の土地を担保にするのだが、その際に他に相続人がいないということを証明しないとならなくなった。そのためウチの父が生まれてから、他の家族を作った事がないか、認知している隠し子がいないか、過去の戸籍を全部追わないとならない。なんたる面倒さ。ていうか銀行、早く言えよ。

別に今の戸籍見りゃわかるじゃん、と思うのだが、戸籍を別のところに移すと、以前の戸籍に記録していた家族の記録とかが引き継げなくなるらしい。そのため転籍していると非常に厄介。おまけに戦争などで戸籍が消失していなければ、除籍後150年保存されているらしい。なんたるアナログなシステム。

父は品川で生まれ、戦時中は広島に疎開し、品川の家は空襲で焼失して戦後はあちこち転々としていたと聞いている。だが今、父に聞いても脳梗塞で過去の記憶が飛んでいるので正確にはわからない。まずは前の本籍地である川崎で除籍謄本を請求。こちらには私の名前も入っているので、現在の戸籍謄本と免許証を見せてすんなり発行された。昭和42年の記録で、当時のものがスキャンされたものがプリントされていた。内容を確認すると、現在の戸籍謄本には記載されていない祖父と祖母の名前、結婚した妹の除籍記録も残っていた。

そこに品川の住所が入っていたので、通り道なので今度は品川区役所に向かった。着いた時には昼休み時間になっていたが、役所の方に親切に対応して頂いた。だが父の出生届や戸籍はここになく、品川から広島に出生届が送付されていることがわかった。念のため確認してもらったが、品川には祖父や祖母の名前でも記録が残っていなかった。どうやら一番古い戸籍は広島にあるらしい。困った。さすがに今からペケジェー飛ばして広島ってわけにはいかない。

今夏初の日焼け帰宅してネットで調べたら郵送での請求もできるとのこと。一応その市役所に電話をかけて確認を取ってから、市のホームページから申請書をダウンロード。記入して今まで取った戸籍謄本と私の免許証のコピー、返信用封筒を用意。郵便局に行って定額小為替と返信用切手を買って同封し、郵送した。

まだ先週送ったばかりでそこの除籍謄本は届いていないが、もし他に転籍の記録があったらどうしよう。半袖で半日走り回って半分だけ日焼けした腕がヒリヒリするが、ヒヤヒヤもしている。つーか家建て替えるのに必要な書類多すぎ!

スクラップ&ビルド

P8133329タイトルは芥川賞受賞作品のパクリ。いや、最近の純文学とか興味ないので読まないのだけれど。

月頭に解体を始めると言われていたのだが、週末毎に訪れても何も変わらず正直ヤキモキしていた。ようやく昨日から予定より半月ほど遅れて古い家の解体が始まったようだ。

今日、様子を見に行ったらどうやら盆休みに入ってしまったようで、半壊したまま放置されていた。未だ解体業者への挨拶も差し入れもできていない。仕方なく中途半端な状態をカメラで50枚程撮影。
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先日、解体される前にと思って荷物を出してがらんとなった家の外や中を撮影しておいた。窓から差し込む光だけで、暗く湿っぽく空気が淀んだ家は、かつて住んでいた頃と印象がまるで変わっていた。寂しくなるとかより、汚いとかボロいとか気持ち悪さが先に立って、さっさとその場から出たくなる。主を失った家の悲鳴が聞こえてきそうで嫌な気分になる。
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古くなった家具や父が放置していた資材や道具、私のガラクタも解体と同時に処分してもらおうと置いたまま。見慣れているはずなのに、住んでいた人間の思念が乗り移って意思を持っているかのように見える。いや、私らが住んでいたんだが。
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竜巻が通り過ぎたように無残な姿となった我が家。木材が悲鳴を上げているようだ。大工だった父は古材をリサイクルして木を大切にしてきたから、その思想をちょっと受け継いでしまった私は見るのが心苦しい。だが立ち止まって何かをするには時間もお金も足りない。残念ながら今の時代、スクラップが一番お金も時間も手間もかからないのだから。

一時期一人暮らしで離れていた頃もあったが、人生の大半はここで寝て、ご飯を食べて、絵を描いて、インターネットして、う●こした。家族の暮らしが染み付いた家。だが寂しさよりも「やっとか」と安堵してしまう。薄情かもしれないが、正直さっさと跡形もなくなくなって欲しい。わずかに残った未練を断ち切るために。
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仮住まいに帰宅し、父にこの写真を見せた。数枚横目で確認したあと、そっぽを向いて手を横に降って続きを見るのを拒んだ。わかるよ。見たくないよね。

とっくに覚悟は決まっていたけれど、もう後戻りは出来ないんだなぁと実感。でも新居が建つ楽しみな気持ちはまだ湧いてこない。