121年前?のヴァイオリン

高級感は・・・ない

前回の弦楽器フェアのとき、知り合いの楽器商の方からあるものを預かった。「買わなくてもいいから、ぜひ弾いてみて」と半ば強引に貸してくれたイタリア製の古いヴァイオリン。

実は以前にもこの楽器商の方から弓を購入している。私の買いっぷりが良かったものだから、売りたくてしょうがないらしい。妹に聞いたら「いいカモだね」と言われた。やっぱ、そうだよね。

で、中身もロクに確認できず、ずっとそのヴァイオリンケースを抱えたまま、その日は午後から友達のもっちゃんと落ち合い神保町の神田古書まつりやら、秋葉原でオタクグッズ見物やら、両国にちゃんこ食いに行ったりだのしてあちこち歩き回った。重くはないのだが、かさばるし借り物なので神経使ってすごく疲れた。
出店がいっぱい 藤子っぽいキャラ 中央線は古い高架がまだ残っている
とりあえずその辺の散策はこの話に関係ないので写真並べるだけで軽く流し。
有名な階段らしい 1912年の階段? 新生ラジ館
ウルトゥルナン? ここに霊が写って・・・ません 両国国技館
邪魔くさかったが、やはり中身が気になる。途中で開けてみたのだが、そこのラベルに書いてある文字を読んでみて驚いた。

Marengo-Romanus-Rinaldi, 1893

・・・マジか。121年前のヴァイオリンやん! ンなもん、気軽に渡すなッッ!!

当日は歩きまわって疲れてしまいそのままにしていたのだが、翌日になって開けてみてもう一度確認。確かに傷やら打痕やら補修跡がハンパなく古い印象。ラベルはニセモノだとしても、明らかに100年以上は経っていると思う。何故なら弾いてみてわかった
パーフリングがギリギリ 傷だらけの胴だ クラックやら補修跡やら

めっちゃ、おばあちゃん臭いッ!(`;ω;´)モワッ

弾いた振動で中に堆積したホコリが舞うのか、とにかくおばあちゃんの臭いがプンプン。カビなのか何なのかわからないが、すごく臭う。というかおばあちゃんをクンクン嗅いだことはないけれど。

ラベルドなわけだけど・・・

そんなわけで、耐えられなかったので借り物なのに外に出してエアダスターでf 字孔からブシューッ。ホコリを出したらラベルが写真のようにハッキリ読めるように。むう、なんかホンモノっぽい・・・

とはいえヴァイオリンの職人やらブランド名を私が知るわけないので、本物なのかはわからない。貸してくれた人はニセモノ掴ますような人じゃないんだけれど(コピーはコピーだとちゃんと言う)、121年前って・・・明治26年ですよ、あーた。相場よりだいぶ安いと思われる値段を言われているが、それでも私のなけなしの貯金が飛ぶほど高価。むむう。

肝心の弾き心地だけれど、反応はいいと思う。というか全くクセなくストレートに澄んで乾いた音が出る。それも軽い力で。音色の良し悪しは・・・正直わからない。

「返すのはいつでもいいですよ」とは言われたけれど、果たしてこれをどうしろと・・・いやいや、買いませんよ?

2014弦楽器フェア

イタリア新作楽器こないだの3連休+1日有休を取って皇居のそば、北の丸公園の科学技術館で毎年開かれる、弦楽器フェアに2回行ってきた。

知り合いの楽器商の方が毎回出店していて無料招待券を頂くのでそれをアテにしていたが、会場でその方と連絡が取れなくて、係員の方に伝言をお願いしてなんとか入場。ふー、危なかった(優待券も持ってはいたけれど)。

初日はヴィオラのミニコンサートがあるのでそれも目当て。ヴィオラのソロは珍しいので、なかなかこういう機会でもないと聞けない(探せばあるだろうが、ものぐさなもので)。今回のヴィオリストは柳瀬省太氏。ピアノ伴奏が柳瀬直子氏って、今調べたら姉弟らしい。

以前にも書いたが、このコンサートは新作楽器で演奏が行われる。司会の和服のお姉さんが「上の会場にて試奏できます」と言うように、いわば楽器の販促活動。したがって奏者は鳴り方も大きさも違う楽器を良い音に聞こえるよう、柔軟に対応できる技量を持ち合わせている必要がある。特に新作楽器はエイジングされていないので鳴りが悪いはず。最大限楽器を鳴らすために動作を大きくしないとならないから、ヴィオラをたまにいじる私は見ていて勉強になる(買う気ゼロ)。

聴いていると各々の楽器で個性があって面白い。低音がクリアに響くか重く響くか、高音が乾いているかしっとりしているか、優等生的だけど音量の幅が狭いか荒削りだけどダイナミックであるか、など各々一長一短がある。それに鳴りの悪いものは奏者の動きが大きくなるのでわかりやすい。恐らく曲も楽器の向き不向きでチョイスして、なるべく差がないように聞かせているのかも知れない。などと、いちいち裏読みしてしまう私。

出入口が1ヶ所しかない柳瀬氏の演奏は派手に体を動かさないタイプ。だがよく見ると左右に足踏みをするように、わずかに重心を移動していた。振り子運動のように全身を使い、右腕に体重を乗せて大きく弓を動かさないと、やはりヴィオラは鳴ってくれないようだ。顔を楽器の方に向けず、頬に近い所で楽器をホールドすれば右腕が大きく使えるみたいなので、柳瀬氏のスタイルは今度真似してみよう(見よう見まねじゃちゃんとできないだろうが)。

しかしこの地下にあるコンサート会場、恐らく講演用なのか演奏会に向いていないようだ。音響が悪いし、空調もうるさい。そして鳴らない楽器とくれば、奏者には相当負担がかかるだろうなぁと思った。

目当てのコンサートも聞けたので、用事のためにこの日は2時半には会場を後に。なんか今年はずいぶんと会場が小さくなったなぁと思っていたら、実は奥に続きがあったことに帰宅してから気が付いた。むしろ行っていない方に見たいブースが多かったので、仕方なく1日置いてまた3日目に来場した(チケットは首からかけるタイプで、期間中ずっと使用できる)。馬鹿だなぁ。
何門だっけ? 挟まれている細かい石って元から? 何もできない公園
初日は用事があってバイクだったが、3日目は別の用事があったので電車で。九段下から降りて行ったのは初めてで、前もって地図で確認して近いだろうと思っていたらとんでもない上り道。江戸城の城跡のため、敵に攻められにくいよう、わざと遠回りに険しく作ってあるのだろう。妙に距離のある階段で汗だくに。なんか妙にこの日は暑かったし。
段差も大きい わかりにくい会場の構造 一番上、多分数千万
会場に着いたら汗が次から次へ噴き出し、一部の試奏楽器の顎当てをしっとり濡らしてしまった。我ながらひどい。汗が引いた所で初日に行かなかった4~7号館を回って、色々なものをもらったり買ったり、ヘタクソな試奏をしてきた。今回興味深かったのはクロサワバイオリンのシンセティック弓毛。馬毛でない合成品なのだけれど、見た目も試奏でも全く不自然に感じなかった。カーボン弓にも高級品が出てきたし、色んなモノがどんどん新素材に置き換わっていくのだろうか。
試奏自由とは言うけれど 半製品? 材料も売ってたり
と、そんな感じで初めて2日(といっても半日×2)通って堪能した弦楽器フェア。帰り際にチケットを頂いた楽器商の方に挨拶に行ったら、変なものを持たされてしまった。
知り合いの楽器商さんのブース 戦利品 なんか持たされた
さてその正体とは・・・書けたら次回に続く。

林裕チェロリサイタル in 目黒

林裕チェロリサイタルまたもや間が空いてしまったが10月26日、以前チラシとプログラムを制作させてもらった林裕さんより、ご招待いただいたリサイタルに行ってきた。

場所は東急目黒線の洗足駅前にあるプリモ芸術工房。レストラン脇の外階段から上がった2階にあるこじんまりとした小さなホールで、壇もない所にスタインウェイのグランドピアノがデンと置いてあった。席も30~40人分の折り畳みイスが置いてある感じで想像していたよりずっと小規模。始まる頃には席がほぼ埋まっていた。私は最前列の壁際に座ったが、幅を取ってイスをきしませてしまうので、演奏が始まる前になるべく動かないよう体を小さくしていた(できないけれど)。

演奏前の代表のご挨拶によると、林さんとは学生時代の同窓。代表もチェロを演奏されるようで、このホールはチェロがよく響くよう設計されたんだとか。今回はホール開設2周年を記念したリサイタルで、林さんの東京初公演でもあるとのこと。客席との段差もなく、MCのマイクも要らない距離感のクラシック演奏会は始めて。ホームパーティぽいアットホームな感じ。

照明が落ちて林さんとピアノの佐竹さんが客席の後ろから花道を通って入場。Photoshop上では見慣れた顔だけれど、ご本人を直接見るのは初めて。とはいえ抱いていたイメージとまったく変わらず、MCが始まって初めて聞いた声もイメージ通りの優しいトーン。

抱えて来た楽器には見たことのないパーツが取り付けられていた。裏板には「膝当て」というヴァイオリンの肩当てのようなゴツイ木製パーツ(名前は「ユーモレスク」とのこと)が固定してあり、またエンドピンもクランク状に2ヶ所曲がって円筒状の重り(「ペザンテ」というものだそう)が取り付けられているもの。イナズマ・エンドピンと呼ばれている、林さんがアーバンマテリアルズと開発したオリジナルのものらしい。会釈のあと、これを床に突き刺して(床はチェロで突き刺す前提に未塗装の無垢材)まずは演奏から。

演奏が始まると疾走感のある音がドドーッと迫ってきた。時折メガネの下から笑顔を見せながら、ピアノの鍵盤を叩くように左手の指がチェロの指板の上を縦横無尽に移動する。チェロとは思えぬスピード感に圧巻だ。チェロを少しでもいじったことがあるならわかるが、あんなスピードで弦を正確に押さえられるものではない。マッドサイエンティストに左手を機械化されたのか、はたまた悪魔と契約したのか。とにかく私が抱いていたチェロ演奏ではなかった。

今回の演目は初めて聴く曲ばかり。というか私はクラシックをほとんど聴かないため元より全然知らないのだけれど、クラシック通でも聴いた事のないような曲ばかりらしい。林さんはチェリストの書いた曲を蒐集するのがライフワークのようで、ベッカーやポッパーなどが作曲した埋もれてしまいそうな曲を発掘し、音にしていってるそうだ。

林さんから頂いたメールの中から勝手に引用させてもらうと「無名の作品を取り上げるという事は、お客さんを説得する様な事」だそう。確かに単純に考えても、ほとんど人に演奏されたことのない曲は、模範演奏などというものもほとんど存在しない。評論家だって誰々の演奏は誰某よりも、などとだいたい比較対象を持ち出して批評するわけだから、評価もされにくいかもしれない。これって結構茨の道なんじゃないだろうか。

とはいえ私のようにクラシックそのものがよくわからない人間は、素直に音を聴くことしかできない。つけられた曲名から、その情景をイメージとして置き換える「音の咀嚼」を試みた。

各々の曲名については失念してしまったが、不思議な旋律のワルツやフランスっぽい洒脱でユーモアのある曲、憂いのある曲、現代音楽ぽいもの。周囲の空気を切り取ったり、吹き飛ばしたり、軽くも重くもしたりと、空気の振動(音)を自在に操りながら聴衆を驚かせ続けていた。私も何度かめまいにも似た、だが心地よい浮遊感。そして急に床に叩きつけられるような重量感を味わったりして音を愉しんだ。

特に印象に残ったのが「ブセファル」というソナタで、意味は「乗用馬」とのこと。タイトルからイメージしていたのは「貴婦人の乗馬」のようなコミカルなものだったが、演奏が始まると多頭引きの馬車のようなドドドッとした疾走感。2楽章目ではなんとなくだが雨の中、黒い馬が石畳を走る情景が思い浮かんだ。湿った空気、ヒヅメが弾く水しぶきの音。馬の息遣い、遠雷の響く黒く垂れ込めた雲。他の楽章でも人間に働かされている馬の視点で描いた「生の躍動」を感じさせられた。本当に作曲家がそう意図したのかは私の当てずっぽうなのでわからないけれど。

いくら小さな会場といえども、ホール全体の空気を動かすほどだから運動量も半端ない。時には林さんのお尻が片方ずつ浮くほど激しく左右にチェロを揺らしながら演奏していた。弦楽器も実は吹奏楽器のように呼吸をコントロールして弾くもの。瞬時に大きく息を吸い込んで疾走したり、消え入りそうなデクレッシェンドで糸のように細い息を吐いたり。こちらも何度か息を殺してしまうような迫力があった。

佐竹さんもここぞとばかりに正確に叩き込むピアノなど、目で合図も送らずによく合わせられるなぁと感心しきり。チェロは体の動きにコンマ何秒か遅れて音が出るもの。林さんの呼吸に耳を澄ませて即座に反応する動体「聴」力がすごいと思った。後ろから見ていたら国会で議事録を取る書記官みたいな冷静沈着さだったけれど。

実はほんのわずかなミスタッチも聞き取ってはいたが、そこをものともせず弾き切り、観客を掴んで揺さぶっていたのはさすが。相当の試行錯誤と練習を積んでいるに違いない。そしてそれは今でも研鑽を積んで完成に近づけているのだろう。親しみやすい風貌でありながら、修行僧のような厳しさを内に秘めていると思った。

あまり門外漢が演奏を批評するとボロが出るので、このくらいにして林さんのMCについても。曲の合間に「みなさん、そろそろ飽きてませんか?」などと笑いを取ったり、作曲家のエピソードを交えたり、アンコールを何曲も応えたりと、とにかく林さんのサービス精神が旺盛なこと。関西弁ではないけれど、関西らしいユーモアあふれた語りでも聴衆を引き付けていた。客席と近いせいもあるのだろうが、クラシックの堅苦しさは感じられない。私のことも皆様にご紹介いただいたり、他にもご協力のあった方々に感謝するシーンもあって、音楽家としては珍しく気遣いのできる方なんだなと思った(優れた音楽家はパガニーニやグレン・グールドのような変人だと勝手に思い込んでいたり)。

公演後は会場側でパウンドケーキとお茶が振舞われた。一呼吸おいて挨拶に現れた林さんはしきりに「集中力が続かない」とおっしゃっていたけれど、確かに演奏曲は難曲ばかりなのだろう。知られていない曲だけに楽章の合間を空けると観客が拍手のタイミングを間違えてしまうためか、ほとんど間も空けずに次の楽章に挑む姿はインターバルも置かずに何本もダッシュしているような印象を受けた。私だったら息切れしてしまって演奏後は奥に引っ込んで、挨拶に出る余裕すらないだろう。サインや記念撮影に気軽に応じている姿を見て、改めてやっぱりプロってスゴイと思った。

などと以上素人が勝手な感想を書きなぐったが、こうして一緒に仕事をさせていただき、クラシックコンサートとほとんど無縁な私がおそらく聴くこともなかった曲を聞かせていただく機会を与えてくださったことに感謝いたします。うん、今度はちゃんと金払って行こう。

あと数日ですが、この文を読んで興味が出た方はぜひ名古屋と大阪のリサイタルに足を運んでみてください(林裕公式サイト)。

2014/11/04 加筆修正。

2014秋ツーリング 粕尾峠→サイボクハム

昭和43年製と誰かと同じ歳

前回の続き。多少時間軸が前後しているし間が空いちゃったけれど。

バイク乗りというのは曲がりくねった道が好物であるのがほとんど。今回のツーリングのメインは峠を走ること。しかし今回の峠はスリリングで怖い道だった(英語と日本語同じやん)。

道が急に狭まったり、路肩が崩れかかっているのはともかく、山から流れ出た湧き水が突如水たまりを作っていたり、枯葉がちょうど走りたいラインに敷き詰められているように落ちていたりと、路面の状態が非常に悪い。とはいえ峠は走り屋のためにあるのでは無いのだから、文句を言うのは筋違いってもので。

そんなわけで久々にヒヤッとすることが数回。シフトアップしたままコーナーに進入し、トルクを失って立ち上げられなかったり、急なシフトダウンでエンブレかかり過ぎてバランスを崩したり。半分ほど走った所でようやく普段より回転数を思いっきり上げてトコトン引っ張るようにすればいいことに気づく。まだまだ私も瞬時の状況把握とライディングが甘いなぁと反省しきり。いや、そんな攻めてませんけどね、ホントに。
路面ガタガタ 林道気分 落葉こわい路肩崩れこわい
今回はタンクの給油フタの手前に吸盤式カメラスタンドADIXXION GC-XA2を固定し、動画を撮ってみた(車載写真は動画のキャプチャ)。動画の方は諸事情により公開できないけれど(けしてそんなに攻めt
つま先こすった 後ろもグラマラス 華奢な内装
山を降りたら国道17号バイパス上武道路の道の駅おおたでひと休み。コーヒーを飲みたかったが、行きで飲んだらトイレが近くなってしまったのでガマン。

道の駅内には太田市に富士重工の工場がある関係かスバル360が展示してあった。様々な出店が出ていて美味しそうだったし小腹も空いていたのだが、次の目的地があるのでたこ焼きだけでガマン。
あんまり旨くない サイボクハム内のレストラン お前、これから食べられるんやで
日も傾き始めた夕方に最終目的地、埼玉県日高市にあるサイボクハムに到着。食のテーマパークと名乗っているようで、ヨーロッパ調のファンシーな建物と道の駅的な地元産野菜果物などを売るテントがごっちゃな感じ。連休もあって子どもから年寄りまで結構にぎわっていた。
鉄板焼きメニュー お酒は飲めません うまー
牧場直営だけあって味は絶品。特に厚切りベーコンは旨味がギュッと詰まっている感じで良かった。お土産に買って帰ろうと思ったら、時間が遅かったのもあって売り切れ。残念だがソーセージなど購入(塩分でごまかさない旨味がグッドだった)。

お約束

粕尾峠はロードタイプのバイクではギリギリな感じの道だったけれど楽しめたし、何より気心知れた友人と会話しながらのツーリングってやっぱいいね!

しかしマルチの400でツインの650とタイトな峠を走るのはキツイなぁ・・・(自分の腕じゃなくバイクのせいにする奴)。

ではもっちゃん、今回もお疲れ様でした。

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