あご当て交換

一年近くも放置したかと思ったら、立て続けにバイオリン連続投稿。まあ mezzo の中では弦楽器フェア開催中なので仕方ない。今年は本家がコロナで中止だしね。

さて先日メインとサブの楽器をアントニオさんに預けてしまったので、その日のレッスンに持っていくバイオリンがなくなってしまった。仕方ないので20年以上前に買った1993年ドイツ製、カール・ヘフナーのエレアコ5弦バイオリンをクローゼットから久々引っ張り出した。

慣れない5弦でレッスンは散々だったが、音色は前より良くなった気がする。家に帰ってしばらく弾いて遊んでいたのだが、なんだか違和感。あご当ての金具が割れていた。えっ、これって割れるもんなん? 断面も黄色でなんか変。

最近ハマりつつあるメルカリで探したら、安くて良さそうなものがあったのでポチッと。ついでに格安のグラスファイバー製バイオリンケースも同じ出品者からゲット。

写真は金具をつけた後だが、あご当て本体の金具も自分でねじ込む必要があった

届いたらほぼ分解状態。金具用のコルクも自分で切って貼るのか…まあ、全然こういう作業、キライじゃないけどなっ(むしろ好き)。

あご当ての金具は片方が逆ネジになっているため、偏らないよう止めるのは結構コツが必要だ。締め込むための工具は市販されているが、いつも精密ドライバーで代用。ただしドライバーの先かボディに当たるとニスが傷ついてしまう(以前何度も傷つけた)ので要注意。

コツは一言で言うなら「少しずつ均等に、慎重に」だ。少しでもバランスがおかしいと思ったら、最初からやり直す勇気も必要(そこまででもない)。

ネジを仮締めしたらあご当てを左右に振って位置の微調整。金具が直角になっているか、あご当てが中心になっているか調整して本締め。ただしこれもあご当てがグラグラしない程度に締めればよく、ドライバーがしなる程の締め付け過ぎはNG。最悪ボディが割れてしまう。後日コルクが馴染むと緩んでくるので、そのときにまた増し締めすればOK。

以前のあご当ては私の二重アゴに合わなかったのだが、今回ガルネリ型に変えてジャストフィット。金メッキもジャックのプレートに合って高級感が出て自己満足。

こんな程度で満足できる人生、悪くないだろう(ぺこぱ)

で、先日からまた楽器が増えて、どのぐらい持っていたか気になったので、全部出してみた。

なんじゃこりゃぁッ!

このまましまい込んでも可哀想なので、ただ今取っ替え引っ換え弾き込み中…

SAS バイオリン・ビオラ用 あご当て 黒檀
SAS

とうとうやってもうた

さて、今回もバイオリンネタですよ。

長いストレスのあとにあんなことこんなことそんなこと、さらにこういうことそういうこともして、前回 あんなようなこともしてきたわけだが、とうとう今回やってしもた。













?!

「なんだ、普通のバイオリンじゃん」と思ったあなたはある意味正しい。だが二十ウン年越しにとうとう手に入れてしまった。モノホンのイタリアンを。

値段は アントニオさん が大サービスしてくれたので、ハッキリとは言えないが、私の給料2か月分ぐらい。現金一括払いなのでコツコツ貯めていたタンス貯金がごそっとなくなった。

実をいうと前回訪問の時に、すでにイタリアンを購入することは決めていた。ただしイタリアンの何を買うのかはまったく決めておらず、予算次第ではあきらめようと思っていた。

アントニオさんにそれとなくイタリアンの相場を聞いてみると「う~ん、100万以上だよね~」との回答。とか言いつつ、悩みながら奥の戸棚から出してくれたのがこれ。

持っただけで違いの分かる軽さ。弾くと ppff まで音がかすれずレンジが広い(本当は pppfff と書きたいが私が弾けない)。太い腕で力任せに強く弾いても逃げずに太い音が返ってくる。何より音色が甘く上品。普通に音階を弾くだけで自分が上手くなったような錯覚を起こす。軽くビブラートをかけただけで楽器が歌い、幸せな気持ちになる。それがイタリアン。バイオリンの成功者が必ず手にするのがイタリアンヴィヴァ、イタ~リア~ン!

私はさほど楽器にこだわりはなかったのだが、今まで会った弦楽器関係の人はみんな口をそろえて「やっぱりイタリア製」と言っていた。同じ材料を使い、同じ型を使い、同じように仕上げても、なぜかイタリア人が作るとイタリアの音になり、他の国の人が作っても真似できないらしい。ドイツ人が作ると音は太いが硬くて歌わない、フランス人が作ると甘く鳴るが芯が細い。中国製は底抜けに明るく音もデカいが品に欠ける…等々、そういう話を聞いてきた。

たしかに今まで何十挺と楽器を試奏したが、イタリアンは別次元だ。楽器をクルマで例えると、今までのは高速道路入口でアクセルをベタ踏みしなければ合流できなかった軽自動車だった。しかしイタリアンだとアクセルをスッと踏むだけで軽く他の車を追い抜いていく4000~5000cc の大排気量車(アントニオさん談)のよう。なのに扱いにくさも神経質なところもない、ストレスフリー。

いつも試奏するだけして買わなかったけれど、今回は即決。アントニオさんに25年以上前に初訪問した時、中国製のパッカリ割れたポンコツ楽器でも丁寧に修理してくれて、「いつかここでちゃんとした楽器を買おう」と心に決めていたし。いつ買うの、今でしょ!

ちなみに25年前の楽器と聞いただけで、ラベルというか製作者も見ずに買った。mezzo って奴はビンボーなクセにたまに値札も見ないで買うところがあったりする。だからビンボーなのかも知れないが。

家に持って帰って老眼鏡をかけてようやくラベルを確認すると、アンドレア・ソルツィ(Andrea Solzi)作、クレモナ・1995年製だった。ネットで調べてみるとアンドレア・シュッツ(Andrea Schudtz)氏がクレモナに構えている工房に所属するバイオリン製作者らしい。

EU連合などヨーロッパでは、外国から半製品を輸入しても、自国で組み上げて仕上げると自国製と名乗ってよいとの事。だから中国などで大量生産したバイオリンの半製品(ホワイト・バイオリン)を輸入し、イタリアで調整してニスを塗って Made in Itary を名乗る楽器も少なからずあるらしい。30万程で買えるイタリアンはそういう楽器と聞いたことがある(それでも音はそこそこ良いらしいが)。

しかしバイオリンの聖地「クレモナ」製を名乗るには、最初から最後まで職人が一人で仕上げなければならないと、クレモナ弦楽器製作者組合で決められていると聞いたことがある。つまり「Cremona」と書いてあるということは、100%イタリアンで間違いないということ。というか40年近くイタリアの製作者から直接買い付けているアントニオさんが間違うわけがない!

というわけでン十年イタリア語の「中ぐらいに強い」を意味する mezzo forte を名乗って来た私がとうとうホンモノのイタリアンを手に入れてしまった。それも25年熟成もの。Che gioia!

って、イタリア語全然しゃべれんし、バイオリン未だにめっちゃ下手くそだけどな…楽器に負けないよう練習がんばります(小並感)。

P.S. よくネットで「初心者用」なんて書いてある1万円前後の楽器があるが、あんなのクルマで例えると「原付バイクで高速教習」するようなものだから。初心者ならなおさら音出しに苦労すると思う。私は友人からタダでもらった中国製で始めたけれど、すでに25年モノで、アントニオさんがバッチリ調整して20万円クラスの楽器になっていたのでラッキーだった…

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またまたまたまたやってもうた

コロナ禍でツーリングは行けないわ、猛暑はひどかったわ、マスクで耳は痛いわ、会社の仕事は増えるわでストレスマックス~怒りのデス・ロード。

長いストレスのあとには大体私はあんなことこんなことそんなこと、さらにこういうことそういうこともしていた。そう、またまたまたまたまた、またやってしもうた。













?!

ラッパ? と思ったあなた、違います。先日ついうっかりストローバイオリンをメルカリで買ってしまった。送料込みで52,000円也。

ケースはあとでサイズぴったりの工具箱を探して購入(Amazon

ストローバイオリンって何ぞや? と思う人もいるので、主に英語版 Wikipedia からナナメ読み解説。

エジソンの蓄音機(Wikipedeia より)

19世紀後半にエジソンがレコードの原型となる円筒式の蓄音機を発明。それが円盤状のレコード盤に進化して量産できるようになっても、20世紀初頭までまだまだ蓄音機はゼンマイで動き、電気を使っていなかった。

もちろんマイクも磁気テープもなかったので、メガホン型の集音器で音を拾って薄い金属板を振動させて、その先に付けた針でレコードの原盤に溝を彫って録音していた。

蓄音機での録音風景(1920年頃、Wikipediaより)

しかし大音量のオーケストラなら問題なくても、ソロや室内楽だと若干音量が足りなかったようだ。電気式じゃないからボリューム調整もできないし、もちろんミキシングやオーバーダブ(多重録音)なんてできるわけがない。

エディ・モートンバンドの録音風景( 1915年)

そこで楽器の音自体を大きくしようと考えたイギリスの電気技師ストロー氏が19世紀終わり頃に発明したのが、このストロー(シュトロー)バイオリン(stroh violin, storoviol)だった。ラッパの口から音が直線的に飛ぶので、機械式録音に最適だったようだ。最盛期にはビオラやチェロも作られていたらしい。

1920年製カーボンマイクロフォン

だが20世紀に入ると音を増幅できる真空管と、安定した電力の供給が進み、録音機器もマイクロフォンやアンプを使う電気式になった。そうなると楽器の音量を上げる必要がなくなり、1920年代後半になるとストローバイオリンは急速に需要がなくなってしまう。クッソ重くて弾きにくかったせいもあって、あっという間に廃れてしまった。

とはいえ木製バイオリンとは違う、蓄音機で再生しているようなノスタルジックな音色はDTM用の音源があるぐらい、現代でも人気があるようだ。

インドの伝統音楽奏者 T. N. クリシュナン氏

それにミャンマーでは未だ生産されているらしい。インドでは大航海時代にヨーロッパから入ったバイオリンがなぜか民族音楽楽器になっているので、同様にイギリス統治の旧ビルマ時代に入ってきたものが独自に普及したのかも知れない。ルーマニアなど一部の国では horn violin とか phonofiddle という名前の似たような楽器が未だ現役で活躍しているようだ。

とはいえ実物を手に入れて弾いてみようなんて思う物好きな奴はそういない。流通している台数自体少なそうで、そんな楽器があることも知らない人が大半だろう。

ようやくここからが本題。そんな珍楽器、私が欲しがらないわけないだろが! ネットで手頃な値段で出ていたら、買わないわけないだろがっ! てなわけで初メルカリでポチッとして、程なく厳重な梱包で届いた。やったー!

ミャンマー製なので作りの粗さは予想通り。ボディはラワン材のような木目もない東南アジア系の木で、ニスすら塗られていない。スクロール(頭の渦巻)も歪んで左右非対称、変なツヤ消しブラックに塗られているし。ペグはなぜかギター用なのに大して微調整が利かない。駒の辺りは穴を開け直し、埋めてないのもご愛嬌。これは出品者の写真で見てわかっていたことだし、いいのいいの、音さえ出せれば。

不器用なお父さんの日曜大工のような仕上がり

さて早速構えてみると、噂に違わず「うわクッソ重ッ」。通常のバイオリンの重量が500g前後に対し、こちらは1.4kg。およそ3倍とかアリエンティな重量感だ。

駒の振動が魂柱(木の棒)を介してアルミの薄板に伝わり、ラッパで増幅するらしい

これはまだアルミ製のラッパだからいいが、当時モノはトランペットなどと同じ真鍮製だからさらにクソ重かったらしい。よくこんなん弾いてたなぁ、昔の人は。まあ当時のSPレコード(78回転)は片面4〜5分しか再生できないので、それぐらいならガマンできたのかも知れないが。

鋳造アルミの増幅器がクソ重い

で、数分いじって重さに慣れたときに気がついた。アレ? これ音程狂ってね? よく見たらなんかナットの位置おかしくね? 第1ポジションを普通に押さえると半音上がってしまうんだけど?

他のバイオリンと比較してみると、余裕でナット(糸巻き側の弦を支える木片)の位置が1cm以上ズレている。これはイカン。5万払ってゴミ買うとかアリエンティ。やっちまったかー!

自分で直すことも考えたが、やはりここはプロに任せたい。悩んだ末、毎回変な楽器を持ち込んでも面白がって直してくれるアントニオさんに、こないだメインとサブの楽器の調整に出す「ついでに」という体で見てもらった(前回参照)。「ついで」じゃなくてこっちを直すのがメインだとバレバレだったが。

こちらの心配をよそに「これ、ラッパの部分だけ欲しい」とノリノリで受け付けてもらい、翌日には仕上げて頂いた。さすがプロの仕事。相変わらずクソ重いのは仕方ないが、ずっと音が出しやすくなった。楽器として最小限機能するよう調整して頂いたので予想よりぐっと安価に収まった。やったねカトちゃん。

楽器として機能するようになって弾いてみると、意外に音が小さい。否。音の指向性が強すぎて、自分の方に聞こえないだけだった。横に小さなラッパがくっついているのはモニター用で、奏者が自分の音を確かめられるように付けてあるらしい。

エレキギターで言うところのモニターアンプ的な

実際試しに人に弾いてもらい、大きいラッパ側に立って聴くと「うっわ」って感じ。バイオリンの先生に見せて聴かせたら、やっぱり感想は「うっわ」だった。爆音までは行かず5割増しぐらいの音量だが、ピチカートでもビリビリ響く。というか金属的なシャリシャリ音が混じって叙情も何もありゃしない。確かにバイオリンなんだけど、やっぱり別物。味といえば聞こえはいいが、やはりチープで下品な音色だ。

とはいえバッハの無伴奏とか弾くと微妙にしっとりと合ったりして、イマイチどんな音楽に合うのかつかみどころがない。今の所用途がまったく思いつかない。ていうか私はまたこんなものを買って、ドコに向かっているんだろうか…

これで全部じゃないんスよ

それはそうと、アントニオさんに数年ぶりに行った「ついで」の用事はもう一つあった。それについてはまた次回(引っ張るなぁ)。

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久々のヴァイオリン調整

前回いつ行ったか覚えていないぐらい、久々に流山のアントニオさんにヴァイオリンの調整をお願いした。

以前は発表会前に調整を出していたのだが、ここ数年は発表会「引退」状態なのですっかり放ったらかし状態。なんちゃって「ヘリエ」モデルの BugsGear 号に至っては冬になって乾燥するとE線が指板にほとんど接している状態になって、押さえるにはラクだがビビり音まで出していた始末。まあ自宅練習用にずっとミュートつけたままなので、音色はさほど気にしてはいなかったのだが。

で、いつものようにアントニオさんの手にかかると弾きやすさはもちろん、音量や音色まで高級な楽器と錯覚するぐらい良くなってしまった。だがよく見るとペグボックスの中でA線が切れかかっていたので、ついでに弦交換。いつ張ったかわからないピラストロのトニカ(サイト内検索したら1年4カ月前)から、いつ買ったか忘れたダダリオのヘリコア(E線はこないだ買ったゴールドブラカットの 0.25mm)があったのでこちらを張り直した。うん、さらに音に勢いが出た。

さて、そんなことよりまた変なものを買ってしまった。それについては次回