kashmir/○本の住人

 以前から気になってはいたのだが、なかなか手を出さずにいた本。こないだ仕事で疲れたらいつの間にかAmaz○nでポチってた。表紙だけ見ると■リエ■マンガのようだけど違うから。内容とかはAmaz○nのレビューでも見てもらえれば大体わかると思うので感想だけ。

 一言で言うとこれは「ダメなオトナが読むダメなマンガ」である。いや誤解のないように書くが、これは誉め言葉。主人公以外の「ダメな人たち」を、しっかり者の小学生・のりこがツッコむというのが基本ストーリーではあるが、その主人公もよく見るとダメだったりする。こう書くと、しょーもないマンガと思われるが実際しょーもないのだ(誉めてますってば)。

 だからといって上から目線でそのダメを嗤って楽しむというのは正しい読み方ではない。自分のダメを自覚している人がダメなキャラクターに自分を重ねて、自分のダメさ加減を自虐的に笑うというのが、このマンガを最も効果的に楽しむ方法ではないかと思う。常軌を逸したキャラクターに振り回されたい、ツッコミを入れたい。自分の欲望に忠実に生き、可愛らしい妹にツッコまれたい。そこの「住人」を疑似体験し、kashmirワールドにどっぷり浸かってダメになる。これこそ、このマンガを堪能するための正しい作法であろう、と私は思う。

 てなわけで何度もフトンにくるまって再読し、ダメ人間化進行中…

吾妻ひでお/便利屋みみちゃん

 ぬこと iBook のことじゃなく、右上の吾妻ひでおセンセの新作(といっても数年前の出版だが)便利屋みみちゃんのレビュー。ちなみに写真で下に重なっている「うつうつひでお日記」はちょうどこのみみちゃん執筆時のことを綴っているので、合わせて読むと興味深い。

 私は奇想天外社刊「不条理日記」以来のあづまファンであるが、最近は追いかけていなかった。あづまセンセはいわゆる「シュール系」ギャグマンガの始祖というか、礎を築いた偉大な人である。だが漫画家としての生き方が不器用なのか、メジャーな舞台には滅多に出てこなかった。クソがつくほどマジメ(マンガは不真面目だが非常に禁欲的でマジメな人だと思う)で完全主義者なためか度々壊れてしまうらしく、しばらく失踪したりアル中で入院したりして完全に過去の人になってしまっていた。それが最近になって本人も驚くほどの「失踪日記」のヒットで再び表舞台に出てきたのは往年のファンとしては嬉しい。

 今回、他の新刊に遅れてようやく入手したが、時事ネタ(メイド・ニート・援交など)を貪欲に盛り込みながら、往年のあづまファンをニヤリとさせるギャグは健在。主人公に巻き込まれたキャラが最後に壊れてしまうオチが多いのは昔から変わらない。

 器用で自由奔放でエッチでしたたかな「みみちゃん」は、儲けているのになぜかアパート住まいでクーラーも買えない。男を手玉に取りながら恋人には一途。犯罪スレスレでも自分の正義は貫く。何より明るく楽しく生きているのがいい。また彼女に壊されてしまったキャラも、表情が実に幸せそうなのである。それは常識に縛られ閉塞感漂う目の前の狭い世界を非常識人な主人公に破壊され、自我を開放して人目を気にしない自由を手に入れたからではないか、などと書いたら言い過ぎか。

 同採録の「あづま童話」は可愛いお姫様が出てくればその次のコマで犯され、人魚姫も恋した男に騙されシバかれながらソープで稼いで貢ぐといった、冷静に考えるとひどい話ばかり。しかしデフォルメされた可愛らしい絵柄で妙に中和され、それらが笑いに昇華されているのがアヅマジック。シニカルでありながら暗さが全くない。

 とり・みき氏が吾妻センセとの対談で評しているのだが、大ゴマを多用せず4段コマ割りで描く人は今は少ないそうだ。デフォルメされていながらも緻密に背景を描きこんでいるため、絵の見た目よりは恐ろしく手が込んでいる。1ページの情報量が多いため、再読する度に新しい発見ができるのがまた良い。また現在一線で活躍する漫画家は、絵は上手いが写真的(あづまセンセもデス○ートの人をそう評している)であり、センセや西岸良平、手塚治虫のような本来の「マンガ絵」を描ける人も少ない。逆にそれらが若い世代にも新鮮に映るのではないだろうかとナウなヤングにもアピールしてみる。

 「失踪日記」は重版に次ぐ重版でバカ売れしたが、この「みみちゃん」は出版されて数年経つというのに、雑誌の読者層があまりに「失踪」以降のファンの嗜好と違うせいか、こないだアマゾンで買ったら未だ初版だった。もっと評価されていいと思うが「あづまセンセの高度なギャグはしょせん君らに理解できんのじゃぁ」とか屈折した考えを持ってたりするのもあったりして…

うさこちゃん

 3日空けたかと思ったら本日3カキコ目。突然ものすごいスピードで走り出すかと思えば、立ち止まって2時間ぐらい動かないとか、mezzo と歩幅を合わせるのは至難の業。思えば小学生の頃から遠足でそうだったような。中学の修学旅行で何故か私の横にずっと校長が張り付いていたのはそのせいか。

 昨日はうっかり本屋に寄ってしまった。財布に金があるとすぐに2万ぐらい使い込んでしまうので、なるべく近寄らないようにしている。でもやっぱり8,000円以上使ってしまった。おかげで給料日前なのに財布にもう2,000円しかない。

 で、面白い本発見。新潮社とんぼの本「ディック・ブルーナのデザイン」(芸術新潮編集部・編)。ディ●ニーとかハローキ●ィはキライなクセに昔からミッフィー(和名:うさこちゃん)は好きだった。愛用のマグカップは会社と家の両方でミッフィーだし。

 読んでみて納得。グラフィックデザイナーとしてのキャリアがあってこそのキャラクターだからか。簡潔な線と限られた色彩は、きっちりとした下積みと確かなデッサン力、そしてセンスがあってこそ。ブルーナ自身への取材と写真もあったが、想像通りの人。ページのボリュームこそ少ないが、興味深い1冊。

 写真はブルーナ・カラーを意識して、台座になってもらった生き物と一緒に。