不規則な生活がたたってちょっと疲れ気味。夜中に起きて風呂にゆっくり30分も浸かって、コーヒー淹れて亀田の焙煎黒豆あられ食ってたら舌かんだ。いたた。

 先日買ったプロフェッショナル用24.1インチワイド液晶ディスプレイ ヒューレットパッカードLP2475w。某T氏経由で譲っていただいたRadeon9600SEでDVI接続し直し、それなりに使いこなせてきたのでレビューをば。

 まずは設置。スタンドの出来が非常によく、軽い力で左右上下簡単に調整が行える。安定性もバッチリ。CRTからの乗換えなので非常にコンパクトにまとまった印象だが、恐らくガスショック式で上下にチルトするスタンドは他の液晶よりはデカイかも知れない。あと他のサイトで指摘されていたのだが、きちんと水平が出ていないという不良ロットがある模様で、実を言うと私のも若干右に傾いている気がする。まあ上に棚板があるので無理矢理それを突っかえにして水平にしてるので問題なし。一応ピボット機能で90度に回転させてタテ長にも使えるのだが、設置している場所は回転できないし、私には必要なし。スタンドの下には念のため地震対策用の粘着シートで固定。阪神大震災で被害の少なかった人も、液晶モニタだけは倒れたとの情報を得たので。まあそれ以前に部屋にモノが多すぎてヤバイけれど。

 入出力系統も充実。DVIだけじゃなくVGAのアナログ入力も添付の専用ケーブルでできる。DVI入力が2つついているが、DVI-1の方だけアナログ兼用のため、最初2の方につないだら信号がないと言われて焦ったものだ。来た当初はグラボがGeForce 5600FX PCIだったため、アナログでないと1920×1200の解像度に対応していなかった。アナログだと気にならない程度とはいえ若干のフリッカーとゴーストが出てしまっていたのだが、Radeonに差し替えてDVIで接続すると画面が恐ろしくシャープになって驚いた。USB HUBとして下に4口、横に2口ついているが、横が結構便利。他にもいろいろ端子がついているが、私が使うことはないと思う。難点といえば電源を入れるたびにいちいち7箇所の入力端子をスキャンして信号が来ているか調べるので表示が遅い。一応OSDメニューで自動スキャンしない設定にもできるのだが、私のようにいちいちタップで電源を切ってしまうとその設定がクリアされてしまうのか、結局はスキャンをまた始めてしまう。まあ実用には問題はないけれど、たまにBIOSとかいじりたい時にちょっと困る。

 マニュアル類はCDにまとめてあって紙がないのがちと不便。DVI-1だけがVGA対応とかわからなかったし。でもその方がエコなのかもしれないし、まあいいや。付属のCDをインストールすると使い方のイマイチわからないユーティリティが入っていて、英語だけのものもある。HP Display Assistantの中にDiagnosticsというのがあるのだが、これを起動するとClean Registryなど、ボタンが3つだけのシンプルなダイアログ。Remove old monitor keys from the registry…などと説明があって、これを押すと古いディスプレイのレジストリを削除してくれるらしい。できる限りムダを省きたい私にとってはなかなか心憎いツールじゃないの。英語だけというのが不親切な気もするけど。

 でも何だかんだ一番肝心なのは色。DVIでデジタル接続するとPhotoshop6.01添付のAdobeGammaが使えなくなった。最近のCSだとAdobeGamma自体ついてないみたいなので、色管理は別のツールでやらないとならない。そうなると液晶側のユーティリティかキャリブレーションツールが必要。その点、添付されているユーティリティは充実しているのでありがたい。

 HPのユーティリティは輝度やコントラストなどをPC側から設定できる。液晶のボタンに手を伸ばさず、画面全体を見ながら操作できるというのは結構重要だ。シビアな色管理をするには普段操作している時と同じ目線でないと意味がない。白色点の設定やRGBの調整もマウスクリックひとつでできるので非常に重宝。

 以前にも書いたが、最初は画面がどうにも赤く見えて仕方なく、色がドギツイ印象があった。一般的な液晶モニタの原色RGBよりもさらに高輝度な発色をするため、まるで発光ダイオードの光をそのまま見ているような感じ。確かにキレイだが他のモニタと全く見た目が異なってしまうため、描いているCGの印象すら変わってしまう。モニタがたとえ理論的に正しい発色をしていても、実際に鑑賞する人が違う印象を持ってしまうのではまずい。

 前回書いたリファレンスプリントでの色調整方法を今度はHPのユーティリティを使ってRGB調整。私の環境(照明:Zライト+東芝電球型蛍光灯マイボールZリアル100W型21Wを1本のみ)では以下のようになった。

ブライトネス コントラスト RGB
17 65 239/242/237

以下のサイト
http://www.tftcentral.co.uk/reviews/hp_lp2475w.htm
の数値を参考にしていたのだが、そちらのキャリブレーション後のセッティングでは

ブライトネス コントラスト RGB
17 65 251/235/242

となっている模様。照明の具合や液晶パネルの個体差もあるかもしれないのでこんなものかもしれない。将来的にはキャリブレーションツールなどを利用したいが、なかなか高価なものなので当分は買えない…しばらくは自分の目を頼りにするしかないだろう。

 色は合わせても何となく階調が気になる。試しにIllustlatorでグレースケールのグラデーションを作成し、画面上にそれを表示させてみた。すると滑らかな階調ではなく縞模様のようなグラデーション、いわゆる「トーンジャンプ」が発生。液晶の場合ある程度は仕方ないのだが、広い色域を持つパネルの場合、中間調で所々微妙に赤や青に転んだグレーが発生してしまう。この場合HPのユーティリティのプラグイン「色補正」機能で調整すれば解決。ウィザードに従って中心の四角部分を左右上下に移動し、赤緑青に傾いていないニュートラルなグレーに見えるところを探る(突然色がジャンプするのが玉にキズ)。右のバーでこの四角が背景のグレーと区別がつかない明度に調整。「次へ」「次へ」と明度の違うグレー全6段階の調整を同様に繰り返し保存。再度グラデーションを表示すると、そこそこ滑らかな正しいグレー諧調が表示されるようになった。

 HPのユーティリティを使い、他のモニターで見たときとの色の印象の差は大分なくなったが、それでもやはり色の彩度は非常に高い。4色プロセス印刷のマゼンタ→蛍光ピンク差し替えに近い発色だ。これは長所でもあるが欠点でもある。描いた物などが「製品」になった際、こちらが期待する色がユーザ側のハードウェアに左右されて再現できないのは致し方ない。だがこの液晶をデフォルトで使うとその落差が激しくて非常に痛い目に遭うだろう。喩えるならF1エンジンで公道を走るようなものだ。周囲のクルマに併走しなければならないから街乗りや渋滞にも対応できるよう、本来の性能を抑える「デチューン」が必要になる。したがって使いこなすにはジャジャ馬を手なづけるような根気が必要。人間の目の補正機能によって誤差が生じるため調整には「絶対値」よりも「相対値」が重要。中間調を重視したキャリブレーションが欠かせない。

 もう一つの欠点としてこの液晶はウォームアップに時間がかかる。CRTでも最低30分は表示させておかないと正しい色が再現されないと言われていたが、それ以上にこのHPの起動直後は泣けるほど画面が青っぽく見える。こないだ某T氏から頂いたI-Oデータの19インチ液晶ディスプレイと比べると差は明らか。同時に起動するとむしろI-Oデータの方がよく見えるぐらいだ。時間は測っていないけれど、左右のモニタが同じような色調に見えるようになるには、室温にもよるだろうが30分ぐらいはかかっている模様。

 で、総評だけどHPのこの液晶は10万以下でありながら高品質というコストパフォーマンスに優れた製品だと思う。しかしデフォルトのセッティングだと「なんじゃこりゃあ」と叫びたくなるほどなので、使いこなすにはそれなりの覚悟が必要。すぐに使いたい人はちょっと高めだが同じ液晶パネルを使用したNECのLCD2690WUXiとか、三菱とかの方がいいかも。まさに手はかかるがリミッターのない外車みたいなイメージ。でもHPって昔から筐体とか内部が堅牢な作りなので恐らく回路がしっかりしてる分、セッティングの自由度が高いから大丈夫(下手なメーカーだと自由度がなくて十分に制御できないことがあるらしい)。LG製の広色域H-IPS液晶パネルも近年のパネルの中では評価が高いようだ。きちんとカラーマネジメントさえしてやればすんばらしい発色で絵描きには最良のツールとなり得ると思う。

 そんなこんなで今回ようやく絵描きマシンが液晶に移行したワケだが、戸惑いながらも何とか自分で妥協できる(満足ではない)セッティングに仕上がった。タブレットのマッピングはHPに合わせ、フォトショやイラレで絵を描くメインに使用。I-Oの方はデフォルトのセッティングにして、ブラウジングやその描いたCGの一般的な液晶での表示検証用に使っている。現在1280×1024+1920×1200という恐ろしく広い画面でこの文を書いているわけだが、何だか広さを持て余している。貧乏人は麦を食うんじゃないのか、あられで舌かんでる場合じゃないぞ。来年から分割で払うので、しっかり稼がないとなぁ…

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