ベン・フォールズ・ファイヴ/ネイキッド・ベイビー・フォトス

 音楽レビュー第2弾。今度はガラッと変えてベン・フォールズ率いる3ピースバンドの1998年のアルバム「ネイキッド・ベイビー・フォトス(Naked Baby Photos)」。これはインディーズ時代も含めた未公開トラック集(って公開した時点で「未公開」じゃないような気がするが)。

 このバンドの特徴というか、メインはベン・フォールズ(Ben Folds)のドライブ感あるピアノとボーカル。メチャクチャなようでキッチリと変拍子なビートも叩けるドラムスのダレン・ジェシー(Darren Jessee)や、ハウリング寸前のところでディストーションを自在に操るエレキベースのロバート・スレッジ(Robert Sledge)も芸達者なのだけれど、ベンのピアノが今までのピアノとは一線を画す巧さと新鮮さ。恐らく子供のうちからクラシックとかの基礎を積んでるんだろうけど、ジャズやソウルやロックに浮気したりしているうちにどこかネジが飛んでしまった感じ。とにかくはっちゃけてるのだ。ピアノという楽器をここまで自由にロックさせるのは、半端なくすごい。

 デビューアルバム「ベン・フォールズ・ファイヴ(Ben Folds Five)」にも収録の「Underground」は、このアルバムでは肝心な導入部でピアノをミスタッチするところまでそのまんま収録されていて、まさに Naked(丸裸)が聴き取れる。
 「The Ultimate Sacrifice」はライブ音源なのだけれど、どこかの大御所ロックスターをまんまパクッたようなお茶目な曲。裏声でワケのわからないことを叫んでいるところは、巨大すぎるスターを皮肉っているようで面白い。とはいえドラマチックに盛り上げるピアノのトリルや、ロバートの分厚いディストーションサウンドなど、しっかりハードロックをモノにしているところがあなどれない。
 「Philosophy」でもサビでガーシュインの「Rhapsody in Blue」のイントロのフレーズを超高速で叩きつけて最後グダグダになるのだが、恐らくちゃんと弾けるのにワザとそれをやっているのだから、ある意味聴く者をナメている。

 時々「F*ckin’ Sh*t!」とかドサクサにまぎれて叫んでたりするし、ハチャメチャで挑発的とも取れるのだが、バラード系になるといきなり人が変わったように叙情的になる。
 「Alice Childress」は傷ついた女性を歌った曲で、包み込む優しさにあふれたメロディ。あれだけメチャクチャしておいて、抑えたタッチと絶妙なペダルワークで聴かせるこの手のバラードを、合間合間に挟んでくるのだから反則だ。

 なお、このバンドは「ラインホルト・メッスナーの肖像(The Unauthorized Biography of Reinhold Messner)」を最後にベンがソロ活動に入って解散してしまったのだけれど、段々と角が取れて洗練されて最初の勢いを失ってつまらなくなっていく、という王道のルートを進んでしまった。何せこちらのアルバムにはこれまた「ありがちな」ストリングスまで入っているし。調律の効いた「らしからぬ」ピアノは多くのファンをガッカリさせたのではないだろうか。ファンはともかく私はやはりベンのホンキートンク(調子っ外れ)なピアノが聴きたいのだ。

 とにかくベン・フォールズ・ファイヴの魅力はマトモにやればちゃんとできるだろうに、バカな方向に脱線してしまう「学生バンド」的な雰囲気にあると思う(もちろんレベル的には学生を大きく凌駕しているが)。そんなバンドで連想するといえばサザン・オールスターズがあるだろう。音楽性こそ違うが「勝手にシンドバッド」のデビュー前に既に「いとしのエリー」を完成させていたというから、確信犯なところは似ているかもしれない。

 こちらのアルバムではないのだが「ホワットエヴァー・アンド・エヴァー・アーメン(Whatever And Ever Amen)」の日本盤には日本語訳詩でベンが歌ったボーナストラック「金返せ(Song For The Dumped)」が収録されている。誰が訳したが不明だが「♪かーねーをかえっせー」と妙に元のメロディにハマってるところがいい。

 実は「挑発」というより、ファンを愉しませるサービス精神故の彼らの「挑戦」なのだろう。ガキなフリして実にしたたかなのである。

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