休日となると最近小学生の姪が私の部屋に居座ってはマンガ本を読み漁っている。姪はマンガを描くのも大好きで、近い将来私のように同人だのに足を踏み入れそう。こちらはなるべくそっち方面に行かせないように思っているのだが、好きだと言われれば仲間が増えるので正直こちらも嬉しい。とはいえ高校時代、勉強もせずにマンガばかり描いていた私を見ているこの子の母には「このオタ兄がぁっ」とにらまれそうだが。
姪は以前から私にマンガの描き方を教えてもらいたがっていたのだが、教えるのが面倒なのと理解できないだろうというのもあって「テメーには十年、いや二十年、いやいや三十年早いわッ」と適当にあしらっていた。また私が人にものを教えるときは基本スパルタなので女子供であろうと容赦しない。だが高学年になったこともあるので描画理論を理解できるぐらいにはなっただろうし、逆にスパルタで根を上げさせてとっとと私の部屋から追い出せると思ったのでおととい本腰を入れて教えてみた。
絵の下手な人というのは大抵曖昧な記憶で勝手に描く傾向がある。目は2つ鼻は1つ、口は1つと認識し、それぞれのパーツを頭の中で記号として処理してしまって、記憶に頼り描こうとする対象物の観察を怠る。なので変な手癖をつけて上達の妨げとなり応用も利かなくなる。もし本気で上手く描こうと思うなら今まで築き上げた手慣れを壊し、手を止めて描こうとする対象物を徹底的に観察して頭の中で立体として再構築しないとならない。
姪の絵を見ると見事に「まーる描いてチョン」に毛の生えたレベルなので、まずはそのやり方を全否定。立体を意識させるために冷蔵庫からタマゴを取り出し、マジックで十字線を描いてそれを観察させて紙に描かせてみた。一筆書きのように一発描きしていた全身図については体の等身の比率を示し、薄いラフな線で補助線やアタリを描くことを説明した。そして人体には直線や平行線は存在せず、S字の微妙なカーブで構成されているという私の発見した「S字理論」、骨格を意識した描写などを大雑把に説明。あとは輪郭線の強弱変化によるマンガ表現の手法など、実例を挙げながらマンガ文法についてさらっと流して今後自分で研究するための課題を与えた。
さらに絵というのは90%が忍耐であり、長時間の集中に耐えられる精神力が必要なこと。ある日魔法のように突然上手くなることはなく、退屈な訓練を繰り返して緩慢に上達するものであること。さらに訓練を繰り返しても上達が止まることがしばしばあること。日頃から勉強を惜しまず常にどん欲に様々なジャンルのものを吸収することなど、どう考えても小学生には厳しすぎる絵描きの心構えを真剣に説いてみた。まあこの程度で根を上げるなら早めに諦めがついていいだろうし。
最初は茶化すような雰囲気だったのが段々神妙な顔つきになり、ひたすら均等に線を引くストローク練習をさせたら言葉少なになった。いじけたかな? と思ったら結構真剣に線を引き始めていた。前から打たれ強い奴だと思っていたが、普通なら根を上げるストローク練習を止めようとしない。どうやら本気のようだ。
・・・もしかして、火ぃ点けちゃった?
6/28追記:
今日、妹(この子の母)に聞いたら「おっちゃんは話が長いんだよっ」と言ってたそうな。