チェロとヴィオラは大きさが違って弦の配置が1オクターブ低いだけ。だが実際弾いてみると大きさが違うだけじゃなく色々と違いすぎる。
まず弓がひたすら重い。だからと言って力ずくで弾いても音は響かない。楽器を構える姿勢がピタリと決まり、弓の上に腕の重みを乗っけないとキレイに響かない。
本によると一番低いC線は他の弦より鳴りにくいので、弓の毛を多めに使えとのこと。チェロの弓はヴァイオリンやヴィオラより毛の量が多く太いので摩擦力で抵抗がすごい。弦に当てる弓の角度もヴィオラとは違うので力の入れどころ、というか抜きどころが難しい。腕の角度がちょっと変わっただけで鳴りが変わったり腕が痛くなったりもするので、姿勢チェックに鏡が欠かせない。
それに音の立ち上がりがやたらめったら遅い。以前にもヴィオラについて書いたが楽器が大きくなると弦も太くなって振動がしにくくなるのだろう。弾いてから音が鳴り出すまでに妙な間がある。ヴァイオリンがスポーツカーだとするとヴィオラは2tトラック、チェロは大型トラックのように初速が遅い。チェロで普通にドレミと弾こうとすると ンドッ ンレッ ンミッ と、意図せず小さい「ン」がいっぱい入ってギッコンバッタンしてしまう。大型自動車でパイロン・スラロームをさせられている気分だ。試しにメトロノームを鳴らしながら弾いてみたがズレるズレる。若干フライング気味に弾き始めないとどうしても音が合わないようだ。
あと以前の記事で「ヴィオラをタテに起こして弾く」と書いたが、楽器を起こすと体に対し180度回転しているわけで。左手で掴むときの方向は同じでも視覚的には弦が前後左右逆になってしまう。慣れれば左手を見ないで済むだろうが今は視覚に頼らざるを得ないので混乱する。
もっと困るのは左手指の配置。ヴァイオリンとヴィオラは写真のように全音を取るときは指と指の間をおよそ1本分空け、半音はくっつける。
だがチェロは指板が長い分、指の間隔をかなり多く取らないとならない。さらに困ったことに全音は指2本で取るのが基本。ファ(F)の音は上のヴィオラだと指の位置が3の指(中指)で取っているのに対し、下のチェロ(画像はわかりやすいよう左に90度回転)では4の指(小指)で取らなくてはならない。指使いが変わるのはちょっと想定外。長年ヴァイオリンでクセになっている指をチェロで切り替えるのはかなり難しい。
ヴィオラをやっていればチェロもすぐいじれるんじゃないかと甘く考えていたが、いやこれとんでもない。気を抜いて弾くととすぐにC線はボンビョビョビョビョーンと暴れるし、指が疲れるしで今の所マトモに音階すら弾けていない。つうかこんなんいじってないで未だちゃんと弾けていないモーツァルトのヴィオラパート練習しないと。
だがチェロを弾いていて効用も実はあったり。チェロで溜まったフラストレーションをヴァイオリンにぶつけたらメチャクチャ早弾きできるようになり、指の股を拡げる練習でヴィオラの4の指(小指)がすごくラクになった。ケガの功名ってやつか。とはいえ私は一体どこに向かっているのだろうか・・・