諏訪ビオラの弦交換

ン年前に購入した諏訪楽器のビオラの弦を久々に交換。色々浮気したが結局ダダリオのヘリコアに戻した。

バイオリン弦についてはオーストリア・トマスティーク社のドミナントが定番で、恐らく日本ではほとんどの人が疑問なくGDAにこの弦を張っているだろう(E線はゴールドブラカットの0.27mmがこれまた定番)。

しかしビオラ奏者は楽器の特性もあるのか、2、3種類の弦を組み合わせるのがザラらしい。それにはビオラならではの特殊な理由があるから。

音響工学的に、バイオリンとチェロの間を繋ぐビオラの音域を出すには、もう二回り胴を大きくする必要があるそうだ。だが肩に担いで演奏するには今のサイズがギリギリ。これ以上ビオラ大きくしたら、今度は演奏者の身長が2m以上必要になってしまうらしい。

さらに楽器の大きさも15〜17インチと定まらず、どうしても楽器によっては音量のバラツキが出てしまうことがあるようだ。そんなわけでこだわる人は各々の音のバランスを考えて弦の種類やメーカーを変えるらしい。

私の諏訪ビオラも弦交換前まで多国籍軍状態だった。交換前の弦はCGがスピロコア(オーストリア)、Dがラーセン(デンマーク)、Aがカプラン(アメリカ)とか節操のない組み合わせ。でもこだわったわけでなく、もらい物や余り物を張った結果だ。どうせ家ではずっとミュートつけて弾くからとそのままにしていた。

しかしさすがにミュート越しでも音の劣化を感じるようになったので、大量に買い溜めしてあったヘリコアに統一した。うん、やっぱり新しい弦はいいね。

ヘリコアはスチール芯の弦なので、比較的他の弦より細めだ。そのためバイオリンとの持ち替えの際、低音弦を指で押さえたときの違和感が少ない。テンションは高めのはずなのに押さえ心地は柔らかく、また反応が早くて音がクリア。つまり「弾きやすい」ので私は好きだ。

弦交換時に使うヒルのペグコンポジション。20年使ってるが減らない。

楽器が低音を鳴らすとき、高音に比べ奏者の使うエネルギーは大きくなる。以前も書いたが人間の耳は音が低くなるほど聞こえづらくなる。それは比例式ではなく対数カーブを描く。そのため音を低くしたければ、楽器を二乗倍大きくしなければならない。

弦も同じ。同じ張力の弦で音を1オクターブ低くするには、本来なら倍の長さが必要だ。だがそれでは楽器が際限なく長くなって人間の手で演奏できなくなってしまう。弦を緩めれば低くはなるが、振幅が拡がることで今度はエネルギーが失われて音量が減る上、弦が指板に叩きつけられてノイズになる。そのため芯材を太くしたり、芯材にさらに細い線をコイル巻きにすることで重さを増して低い音を出せるようにしている。バイオリンのE線とG線の太さを比べると、同じ楽器に張っているものと思えないぐらい違うのはそういうことだ。

ヘリコアが細くても張力を保ちつつ低音が響かせられるのは、スチール芯線に比重の大きいタングステン合金を巻いて弦を重くしているかららしい。ちなみにタングステンの比重は19.3で、鉄の2倍以上重い。

音楽は文系と思われるが、楽器の構造や音楽理論はバリバリ理系。ピアノなんてアコースティックと呼んで良いのか疑問なぐらいで、部品点数が多いし材料も木材だけでなく鋼鉄、真鍮、象牙(現在は人工)、羊毛フェルト、樹脂など使用している。電気で動いていないだけで超複雑な精密機械だ。

ところが演奏については数式や言語化できないニュアンス、有り体に言えば「感性」が要求される。理屈だけで割り切れないからメンドくさい。

なんだかんだ弦楽器に触れてから25年以上経つが、飽きっぽい私が続けられているのは、調べれば調べるほど底が深くて見えないからなのだろう。

さて、弦の話に戻る。唯一ヘリコアに欠点があるとしたら、替え時がわからないこと。あまり弾かないせいもあるが、ヘリコアについては一度も切れたことがない。それに他の弦ならば明らかに音の張りが失われ、雑音が増してくるのだが、ヘリコアは雑音が元々ないので、劣化がわかりにくい。

カプランはほつれ始めていた。

ってこれって長所じゃないか。まあ良くも悪くもクセがなく、他の弦のような個性がないのが欠点なのだろう。最近バイオリンにも張ったけれど、やっぱりこの弾きやすさ、好きだなぁ。

とまあ、ただ単に弦を交換するだけの話なのにウンチクを語りたがるのはオッサンの習性というか自己顕示欲というか。うーん、年取ったもんだ…

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