愛器の正体 その1

 職場でヒマを持て余してWebを検索しまくったら愛器オウム号の正体がわかった。2004年に民営化された天津鹦鹉乐器有限公司(何かすごいBGMが鳴るので注意)が国営楽器工場だった1977年に量産されたものらしい。

 当時の中国は文化大革命真っ盛り。共産主義という「マジメに働こうがサボろうがギャラはおんなじ」という職人のモチベーションを下げる政策もあって、品質は二の次に大量に安く作られていたらしい(詳しくは古賀弦楽器さんの「中国提琴事情」へ)。現在はアコーディオン生産がメインでヴァイオリンは製作していないようだが、何故かトップページはヴァイオリンだしBGMはピアノだし。ロゴマークは一緒なんで間違いはないと思うが謎。

 このヴァイオリンは友人の引越しの際に出てきたもので、元々はさらにその友人(私の知らない人)が学生時代に所有していたものらしい。何でも学校で嫌がらせを受けて同級生に壊されたものと聞いている。もらったときは裏板が割れ、駒もなく、魂柱は中でコロコロ転がっている状態。

 16年前に修理を依頼したときにアントニオさんには「手作り感がいいねぇ。渦巻きとかゆがんでるしパーフリングも手描きだし(笑)」と言われつつも「いい楽器だよ」と言われた。普通は量産品だとプレス合板で型抜きしたり機械でガーッと削って作るようだが、当時の中国は機械よりも人間の手間賃の方が安かったらしいので、結果的にオールハンドメイド。それが結果的に音質では良い方向になったらしい。

 元々が量産品で仕上げが雑な上、年数を経てニスもひび割れまくり(恐らく量産家具に使う安物ニスであろう)。自分でもぶつけまくって傷だらけ。全体のフォルムも何かのっぺりして変。でも目を引くのは指板。通常は黒檀が使われるところにローズウッドっぽい甘栗色の木(天津製だけに)が使われている。これがなかなか手触りがよかったりする。音も低音から高音までキッチリ鳴る上、雑音がしない。持っているのが私じゃなければさぞかし気品溢れる音を出すであろう。

 最近になって再調整に出したらさらにいい楽器になったみたい。先生にチェックしてもらっても「いい楽器ね」と言われたぐらいだし。見た目もあまりよくないし価値もないヴァイオリンではあるけれど、手になじんだ愛器だけに今後もメイン器として使い続けていくことになるだろう。というかこの楽器の実力を引き出せるよう腕を上げないとね。

「愛器の正体 その1」への2件のフィードバック

  1. (私の知らない人)はWikipediaで調べられます。
    彼の親は去年、市長選挙に立候補していた様だったし、実家は文化財に指定されているような人なのでアウトラインはだいだい推測できようかと思います。
    彼自身は東京でNPOをつくったりしていたようでした。最近の詳細は不明ですが、たぶん生きているでしょう。
    新宿ゴールデン街で店をやりながら、都内か京都かで芸術家もどきの事でもやっているんじゃないかと思います。十数年会ってないし話もしてないけどね、ネット上のどっかにはよく出てくる人だよ、Alicia君は。

  2. なーるほど。
    もらった当初はゴミに近い状態だったので、
    まさか再生されて人に弾かれているとは思わんでしょうね。

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