先日、火鉢が割れてしまったが、実はヒビの入っていた古い方はすでに補修してあった。補修後初めて火を入れてみたのだが、なんとか大丈夫そうだ。

補修といっても陶器は難しい。伝統的な修理方では漆を使うらしいが職人の技術が必要とのこと。また熱が常に加わるので耐久性なども考えると漆ではもたない気がする。色々と検索してみたところ、どうやらエポキシ系接着剤が強度や耐熱性に優れているらしい。
ホームセンターで買ってきたのはコニシの「ボンドEセット」。2液混合タイプのごくオーソドックスなやつ。完全硬化に24時間以上、冬季だと3日かかるとある。だが別に乾燥の早さは求めていないし、速乾性のものは揮発性の有機溶剤を添加していて樹脂の耐久性が劣る気がするのでこれをチョイス。

余談ではあるが、アメリカの画家ノーマン・ロックウェルは雑誌の挿絵の締め切りに間に合わせるため、油絵具の乾燥を早めるようシッカチーフという有機溶剤系の油を多用していたらしい。それが原因でロックウェルのキャンバスってヒビが入って大変なことになっているという噂を聞いた。早さを求めると何かを犠牲にしなければならないってことだな。

と、話を戻そう。まず火鉢は水洗いし天日でしっかり乾燥させておいた。乾いたらヒビ以外のところに接着剤が着かないよう、今度は大雑把にテープでマスキング。ヒビの隙間に接着剤を詰め込むのに表面へこすりつけることになるので周囲が汚れないようテープでカバー。面倒な作業だが、これはパテやコーキング作業でも基本中の基本。ここをおろそかにすると耐久性も変わってくる。

エポキシはチューブから同量をしぼり出し、添付のコテでぐねぐねとよくかき混ぜて使う。化学反応で獣臭い樹脂の臭いがプンプン。Eセットは思ったよりも粘度は低いが、でもヒビに浸透するほどサラッともしていない。マスキングした上から押し付けるようにヒビに盛ってなすりつけ。

ヒビが動くところは少しでも奥に接着剤が浸透するよう慎重に動かした。だが隙間のほとんどないヒビには染み込まないのでヒビに沿って表面を削ってみた。なおエポキシは硬化前に熱を加えると粘度が低くなるとのこと。試しにガスバーナーで軽く熱を加えてみたら表面のエポキシがヒビから吸い込まれていくように浸透。これなら強度が出そうだ。でもドライヤーの方が扱いやすくていいかもしれない。ていうかガスバーナーじゃ近づけすぎると焦げるし。ていうかメチャ危ない。

ヒビは3方向に入っていたので、時間差を置きながら1つずつ埋めた。というかこんなにヒビが入っててよく分裂しなかったものだ。全部補修するのになんだかんだ足掛け2日かかった。そのままずっと放置して完全硬化させてみたが、ガラス質まで硬くはならず若干の弾力は残るようだ。取っ手を持って軽く振ってみたがビクともしない。おお、これならバッチリかも。

で、昨日から炭を熾して使っているが、特に問題なく使えている模様。とはいえかなり熱が加わるものだから果たしていつまでもつだろうか? ただ今耐久テスト中。

※追記
あれから数シーズン使ったがビクともしなかった。エポキシすげえ。

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