先日から火鉢を焚き始め、机の下に置いて暖を取っている。色々不便だがやはり柔らかな炭火が心地よい。
最初の頃は全く使いこなせず、ネットで調べても情報がなくて大変だった。でも数年この不便な暖房器具を使っていたらそれなりにコツをつかめてきた。誰の役に立つのかわからないが今回は自己流火鉢の使い方をだらだらと書いてみる。
(1)火鉢を新品で買うと灰が入っていなかったり、別売りだったりする。誰かにもらおうにも今どき灰を持っている人などなかなかいないし砂などでは代用できない。始めから灰を入手しておくか、豆炭(マメタン)をアンカや七輪などで使って灰を作るようにしよう。灰は底から半分程度の高さがあれば十分。少ないと火鉢の底が熱くなって床を焦がしてしまうし、多いと炭が上に露出して危ない。
(2)炭がもぐらないように灰をならし固めたら炭を並べる。火鉢に使う炭はウバメガシの備長炭やクヌギの菊炭がベスト。ただ弾きや臭いは少ないのだが非常に高価だ。なので貧乏人の私は焼き鳥店などで使われている業務用の安価なオガ炭(おが屑が原料の成形炭)を愛用している。ただしあまり安いと品質が劣っている場合もある。私は色々試した結果、品質とコストを両立している大阪の炭専門店のものをずっと使っている。
オガ炭はそのままだと長いので、叩き折って扱いやすい大きさにしておく。並べる際は中心を高くし、互い違いに立てかけるなどして炭が面同士で接しないよう隙間を空ける。ただし隙間が多いと今度は自然に火が消えてしまうので熱が伝わりやすいよう炭がお互いに点や線で接触するように並べる。オガ炭の穴は通気孔のため、内壁の底から上の中心に空気が抜けるよう配置すると燃焼しやすい。
(3)オガ炭などの硬い炭はマッチやライターでは全く着火しない。新聞紙を丸めて燃やしてもダメだし、キャンプ用の着火材は臭いや煙が立つので全く使えない。なので私はガスバーナーを使うがその前に下準備。
着火しやすいよう間に消し炭を隙間に挟む。消し炭とは炭を消火したときに燃え残った炭で、気孔が開いて新しいものより着火しやすい。また炭の細かい屑や粉などを灰の上ににまいておくのも効果的だ。
消し炭や粉がない場合はナラ炭などの柔らかい炭を使う。これもキャンプ用の炭ではなく、岩手ナラ炭など品質の良いものを使わないと臭いがひどくてまったく使えない。これらが用意できない場合は(4)で着火に苦労することを覚悟しよう。
(4)業務用の鋳物コンロや練炭などが使えれば火起し器で着火する方がラクだ。だが最近の家庭用ガスコンロは異常加熱すると自動消火してしまうため火起し器が使えない。仕方ないので私は着火にホームセンターなどで売っているカセットコンロのボンベ用ガスバーナーを使っている。
ただし室内でのガスバーナー使用は危険なので十分な注意を払うこと。ボンベに取り付けると倒れやすいので、使用後の加熱したバーナーの置き場所もあらかじめ確保しておこう。
炭を炙る際は炭同士が多く接しているところを重点的に。真っ赤になってきたところで別の所も炙って火を広げる。最低3本の炭が接して赤くならないと自然消火してしまうため念入りに炙る。
(5)炭の端が赤くなっただけではバーナーを離すとすぐ火が消えてしまう。5分程度根気よく炙ると赤いところが広がって安定してくるが、3本以上の炭の端が1センチ以上は赤くならないとすぐ消えてしまう。だがずっとバーナーを使い続けると炭火の輻射熱(赤外線による目に見えない熱)で火口やボンベがだんだん加熱する。特にボンベは熱せられると圧力が劇的に上がって大変危険。最悪バーナーが破損するしガスがもったいないので、ある程度炙ったら今度はウチワで扇いで火を広げる。
強く振ると火の広がりは早くなるが灰が飛び散って大変。かといって弱すぎると火が消えかかる。灰が飛び散らないギリギリのポイントで風を連続的に送る。
(6)扇いでいるうちに赤い所は安定してくるが、黒い所はそのままではなかなか着火しない。天地をひっくり返したり、軸方向に90度回転して炭をある程度シャッフルする。ただし単体の火はすぐ消えてしまうので、着火している所が必ず交わるように並び替える。なるべく中心が燃えるよう、火鉢の底から火鉢の口の中心に向かって炎が上がっていくようなイメージで再配置するとよい。ただし大きく並び替えると火が弱まってくるので、そうなったらひたすらウチワで扇ぐ。ここが一番の正念場だ。
(7)赤くなった炭の周囲や、炭の間からわずかに青い炎が上がるようになったらOK。これでしばらくは自然に消えない。慣れてくるとここまで15分から30分ぐらいでできるだろう。あとは手を炙るなり、股火鉢をするなり、上に五徳を置いて鉄瓶で湯を沸かすなり、網を敷いて餅を焼くなり好きにしよう。
ただし炭は燃えると体積が減ってくるため、段々と配置が崩れてくる。また減った分火力が落ちるので炭を継ぎ足さなければならない。冷たい炭は着火しにくいため、補充用の炭は火鉢の壁側に立てかけて並べて余熱しておく。また追加する際も真っ赤な炭で挟んでやらないと着火しないので、時折炭を並び替える必要がある。うっかり補充し忘れて火が弱くなったらウチワで扇いだり、ガスバーナーで再着火しないとならない。かなりめどい。というか着火に最低15分以上かかる時点でめどいが。
炭火を消したいときに水をかけるのは厳禁。炭火は見た目よりもかなり高温のため、温度差で爆発(爆跳)して大事故になる。消壷(けしつぼ)という鋳物の容器に入れてフタをし、酸素を断って消す。こうして消した炭は消し炭として次回の焚き付けに利用する。
また就寝時やちょっとした外出時には1、2本灰の中に埋めておくという技もある。そうすると炭の燃焼速度が抑えられる上、次回の使用時に種火として利用できるので再着火が格段に早くなる。ただし灰の中でゆっくりと燃え続けているため、火鉢の周囲に可燃物を置いてはならない。地震に備えて上に水の入ったヤカンでも置いておけば多少は安全かもしれないが、心配なら火消し壷で完全消火しておいた方が安心だろう。
さて長々と書いたが、このように火鉢が非常に不便な代物であることをお分かりいただけただろうか。というか何故私はこんな不自由なものを使っているのだろう・・・