前回買ってしまったポシェットヴァイオリン。弾くとかなり肩が凝る上、ポジション移動すると滑り落ちそうになる。何せこのヴァイオリン、あご当てがないので首で楽器を支えられない。

ヴァイオリンは1600年代に発明されてからほとんど構造が変わっていないように見えて実は細かなマイナーチェンジを施されている。ネックの太さや取り付け角度など、近~現代に書かれた高度なテクニックを必要とする曲が弾きやすいよう改良されている。あご当てなどは1800年代にドイツのシュポーアが発明したので意外に新しい。

前回にも書いたがポシェットヴァイオリンはそのあご当てが登場する前に流行ったもの。バロック時代はヴァイオリンのエンドピンを胸に押し付けたり、右下端を首に押し付けて演奏したらしいのであご当ては要らなかったらしい。しかし近代になって単なる伴奏楽器から独奏楽器として演奏されるようになると、ポジション移動するのに楽器を左手で支える余裕がなくなったため、あご当てや肩当てを使って左腕をフリーにする必要が出てきた。
  
またアジャスタも恐らくそれよりずっと後に使われるようになったものだろう。アジャスタとは一番音の高いE線に取り付けて調弦の微調整に使うもの。何せヴァイオリンの弦は木の棒に巻きつけて穴に挿して止めているだけ。高い音ほどチューニングが合いにくいので、現在ではほとんどの人がこのネジ金具を使っている。子供用の分数楽器は小さい分さらにシビアなので全弦に取り付けることも多い。

一応このポシェットヴァイオリンにはE線アジャスタが元から付いてはいたのだが、アーム部分が長いのが気になっていた。楽器がコンパクトな分、弦の長さが稼げないのにこれだとさらに短くなって駒にギリギリ。音響的にも悪そうだ。なのでヒル型と呼ばれる英ヒル社のE線アジャスタを使えばアームがない分、弦長が稼げるかなと思ったのだがこれだと弦が選べない。ヴァイオリンのE線にはループエンド(端が輪っかになってるもの)とボールエンド(玉状の止め金具つき)のものがあるのだが、ヒル型は前者にしか使えない。

ネットで探したらボールエンドにも使える独ウィットナー社のアジャスタ(910-014 Mod.Uni)を見つけたので、これを底値楽器屋(合資会社イターナル)に発注。あご当ても目当てのものが格安だったので一緒に購入した。
  
アジャスタを取り付け直したら他の弦とほぼ揃い、長さにして15mmほど延長。音が良くなったかはわからなかったけれど、弦の負担が減って気分的にはいい感じ。逆に他の弦の角度が急すぎるのが気になるようになってしまったが、気にし始めるとキリがないのでこれでOK。

で、あご当ての方も取り付け。このあご当ては多分スロヴェニアSAS社のパチモノでほぼ半額。SASはクルミ材とか高級な木を使っているがこれはプラ。射出成形のバリ痕まである価格なりの安っぽさだが、すでに小さなヴァイオリンにゴテゴテつけるだけでスマートではないので気にしない。
  
でもパチモノとはいえSASと同様角度調整もちゃんとできる。それに他のガルネリ型やフレッシュ型など定番あご当ては2本足で支えるが、これは1本足なので小さな楽器でも取り付けられる。何度も試行錯誤しながらベストポジションを探りつつ、ヘックスレンチで楽器を締めつけすぎないよう慎重に取り付け(六角はドライバよりトルクがかけやすいから、力を入れたら楽器が割れる)。おお、左手を離しても楽器が落ちなくなったしすごく演奏しやすくなった。

ちょっと全長よりあご当てがはみ出しているのが気になるが、実用レベルに持ってこれたので満足満足。これでポジション移動もラクになった・・・と思いきや小さすぎてすごく演奏がツライし音程も合わせづらい。何せすぐ目の前を弓が通過するから。弓先で早いパッセージとか弾いたら弓が鼻の穴に刺さるかも。いや、早いパッセージ弾けないけど。

うーむ、古楽器奏者のようにあご当てなしで胸で支えた方がいいのか。それともやはり役立たずなシロモノとなるのか・・・

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