さて勢いに任せて買ってしまった諏訪楽器チェロ。置き場所も考えていなかったので、部屋の中で寝たり起きたりする度に端にどかす生活を強いられている。

さてこの楽器、遠目に見るとしっかりしてそうだが本体をじっくり見るとやはり仕上げが粗い。胴体部は合板じゃなくしっかり乾燥された1枚板で作られているようだが、塗装が所々粒状(スプレー塗装か)になっていたり削り痕が残っていたりで手が抜かれまくっている。指板やナットやその他黒い部分は黒檀ではなく黒塗りだし、パーフリング(表裏板の縁に埋め込む黒い二重線に見える木)は手描きな上に雑だ。糸巻きの穴や見えにくいところのバリなどもそのまま。あと一歩のところを寸止めにして楽器としての体裁をギリギリに保っている感じ。ある意味職人芸の域かもしれない。コストダウン的な。

アジャスタはテールピースにしっかり止まっていなかったし動きも渋い。反っているのか駒の位置をいくら調整しても表板に密着してくれない。魂柱はなんか間違っているところに立っている気がする。たぶんマジメな楽器制作者に見せると修正するより火に投げ込みたくなるレベルではないだろうか。
  
その辺は以前買ったヴィオラで想定内なのだが、想定外は音がちゃんと出ないこと。弦はなんだかへにゃんへにゃんでチューニングしても「ブビビビビーン」とビビリ音がすごい。しっかり力を入れてこすらないと音が裏返るし、弦高が高いので指で押さえるにも力がいる。どれくらい力がいるかというと、1時間ぐらいいじっていたらその日全身が痛くなって寝込んだぐらい。今も湿布を貼っている。

それでもいじらないと気づかないことがあって面白い。低音弦のC線側の指板がなぜか平らに削られていて不良品かと思ったら、これは弦のビビリを防ぐための「平面指板」とのこと。どのチェロもこのように加工するらしい。
  
音域が「人間の声域にもっとも近い」なんて言われているけれど意外に音は想像よりずっと低い。映画「ジョーズ」のテーマの出だしの「ズーズン(C2-C#2)」がちょうど最低音なのを弾いて確かめてみた(しばし「ズッズン ズッズン」と弾きまくっていた)。ヴァイオリンなんかよりもはるかにフラジオレット(弦に軽く触れ口笛のような共鳴音を出す奏法)がやりやすく、ピチカート(ギターのように引っかく奏法)の音がでかい。残響も長い。

他にも回転イスだとまるで楽器をホールドできないとか、結構ガニ股にならないといけないとか、運指の距離が長くて大変とか、立てて置いとけない不安定な代物であるとか、ヴァイオリンより姿勢がラクで弾きやすいだなんてありゃウソだなとか、絶対こんなん担いで電車なんか乗りたくないなとか、見ていただけじゃわからないことをいっぱい発見。実に興味深い。

とりあえずチェロの形をギリギリ保っているとは思うのだが、工房に持ち込んで「これはチェロじゃない何かです(苦笑)」と言われないことを祈るのみ・・・

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