ヴィオラの調整

実は先日アントニオさんにヴィオラの調整をお願いしていた。このところ出費がかさんでキツいのだが、最近になって楽器の限界を感じていたし何より7月末にある発表会前に本調子にしておかないとならないので。

久々雨が上がったのでまだ慣れないCB400SFで千葉県流山市に。アントニオさんは以前新松戸にあったのだが、昨年10月に流山へ移転してから一度も訪れていなかった。本来弦楽器は季節の変わり目ごとに専門家にメンテナンスしてもらうのがベストなのだが、プロの演奏家でもないし年中無休で貧乏なのでそうもできない。なのですでに20年近い付き合いではあるが滅多に来ないし、来たら来たで毎回安物の楽器を持って来る嫌な客なのだ私は。

とはいえそこのご主人は気さくに対応してくれるし、得体の知れない楽器を持ってきても「こういうのを化けさせるのが面白い」と言ってくれるので遠くても毎回ここに出している。いずれは出世して世話になった恩返しにアントニオさんで一番高い楽器をポンと現金で買いたいが、恐らく慢性貧乏症候群をこじらせている私には一生無理な話か。

背中にケースを抱えて片道1時間半かけてCBでおおたかの森へ。まだ駅前が整備されたばかりなので地図に載っていないところが多くてちょっと迷う。新築の家ばかり建ち並ぶ区画でどれも似たり寄ったりだったのだが、3階建ての建物を目指したら何とかたどり着いた。

あらかじめ電話で予約はしていたので挨拶もそこそこに楽器を見てもらう。諏訪楽器で1万4千円だったことは伏せたけれども、プロが見ればバレバレの安っぽさ。無理だと言われたらさっさと引き上げようと思っていたが「うん、大きさも十分にあるしこれなら大丈夫ですよ」とのこと。魂柱は短いようで交換が必要だが駒は削ればそのまま使えるらしい。弦も「ヘリコアでまだ新しいからこのままいけるね」と言われ格安でやってくれることになった。でも作業内容と金額を詳しく列記してしまうとアントニオさんの商売に影響しそうなのでここには書けないかも。翌日には出来るそうで、「びっくりするぐらい変わりますよ、楽しみにしておいてください、フフフ・・・と職人魂に火をつけてしまったようだ。

はやる気持ちをスロットルにかけ、昨日CBでバビュンと取りに行ってきた。途中とてもここに書けない数値がメーターに出ていたが、ようやくこのバイクのクセがわかってきてこれまた楽しい。タイヤも端っこまで使ったし。

今度は迷わず到着。店内に入ってご主人が開口一番「変わりましたよ」と満面の笑顔。駒を見ると厚みが削げてすっかりスリムに。早速その場で試奏してみたがなんだこれは・・・! ド下手糞な私が弾いてもとても上品な音が出る。というか軽い。重量は変わっていないはずなのに、支えるのがラクになっている。何より軽い力ですばやく楽器が反応する。全く別物の楽器に化けてしまった。ご主人も「こんな化けるとは自分でも思っていなかったですよ」と言っていたが、どういう魔法を使ったらこうなるのか。ご主人が弾いたらまるで室内楽のアンサンブルを聴くかのような響きと余韻。つうかこの楽器のポテンシャルをてんで引き出せない私が恥ずかしい。

また、新しい店内は天井が高めで音の反響が素晴らしい。「音を良くするように作ったつもりではないんだけれど、ここで弾くのを楽しみにしているお客さんも多いんですよね」とのこと。どうやら店内のイタリアンの楽器が一緒に共鳴してなんとも言えない深みを味付けしているとのこと。ここで室内楽とか演ったらすごいだろうなぁ。

会話もそこそこに楽器を抱えて帰宅。早速ケースから取り出して弾き始めたらスピカート(すばやく弓を動かして音を切る、と言ってもドレミファソラシドの音階だけど)がとんでもなくラク。重音(2弦以上を同時に弾く)も共鳴音と余韻がすごい。取り憑かれたようにそのまま30分以上連続で弾いていたが、全く首肩が痛くなくなった。楽器の調整だけでこんなに変わるものなのか。

ああ、こんな早く、安く、上手く行くんならさっさと調整に出せばよかった。何はともあれアントニオさんに感謝! 最後にアントニオさんの名言。

「楽器として生まれたのなら、最高の状態にしてあげたいよね」

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