バイクで風を切っていたらどこからかキンモクセイの香りが漂ってきた。トイレの芳香剤と悪く言う者もあるが私は好きだ。香りが拡散するのでどこから漂ってくるのか見つけにくいし、普段は花など咲きそうにない常緑樹の垣根のフリをしているのでそれとわかりづらい。

まだ小学生の頃だったろう。頭の奥のホコリまみれの記憶を引っ張り出すと、ウチにもキンモクセイがあった。犬の鎖をつなぐ杭の代わりに使われ、背が低く樹形もひどかったのが2、3本あったはずだ。庭先で花が咲くと鼻をくっつけるようにしてずっとフンフン嗅いだ覚えがある。

しかし中学生を過ぎた頃、庭からいつの間にかそのキンモクセイはなくなっていた。伐った理由は聞かなかったが何とも寂しい思いがしたのは覚えている。

オレンジの花弁を一杯にぶら下げて、甘い香りを漂わせるのは年間通してほんのわずかな期間。近所の垣根の花もそろそろ終わりらしく、香りが漂わなくなってきた。また昔のように鼻を近づけて残り香を楽しもうか。不審者と思われない程度に。

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