さて、今回もヴァイオリンネタですよ。

長いストレスのあとにあんなことこんなことそんなこと、さらにこういうことそういうこともして、前回 あんなようなこともしてきたわけだが、とうとう今回やってしもた。













?!

「なんだ、普通のヴァイオリンじゃん」と思ったあなたはある意味正しい。だが二十ウン年越しにとうとう手に入れてしまった。モノホンのイタリアンを。

値段は アントニオさん が大サービスしてくれたので、ハッキリとは言えないが、私の給料2か月分ぐらい。現金一括払いなのでコツコツ貯めていたタンス貯金がごそっとなくなった。

実をいうと前回訪問の時に、すでにイタリアンを購入することは決めていた。ただしイタリアンの何を買うのかはまったく決めておらず、予算次第ではあきらめようと思っていた。

アントニオさんにそれとなくイタリアンの相場を聞いてみると「う~ん、100万以上だよね~」との回答。とか言いつつ、悩みながら奥の戸棚から出してくれたのがこれ。

持っただけで違いの分かる軽さ。弾くと ppff まで音がかすれずレンジが広い(本当は pppfff と書きたいが私が弾けない)。太い腕で力任せに強く弾いても逃げずに太い音が返ってくる。何より音色が甘く上品。普通に音階を弾くだけで自分が上手くなったような錯覚を起こす。軽くビブラートをかけただけで楽器が歌い、幸せな気持ちになる。それがイタリアン。ヴァイオリンの成功者が必ず手にするのがイタリアンヴィヴァ、イタ~リア~ン!

私はさほど楽器にこだわりはなかったのだが、今まで会った弦楽器関係の人はみんな口をそろえて「やっぱりイタリア製」と言っていた。同じ材料を使い、同じ型を使い、同じように仕上げても、なぜかイタリア人が作るとイタリアの音になり、他の国の人が作っても真似できないらしい。ドイツ人が作ると音は太いが硬くて歌わない、フランス人が作ると甘く鳴るが芯が細い。中国製は底抜けに明るく音もデカいが品に欠ける…等々、そういう話を聞いてきた。

たしかに今まで何十挺と楽器を試奏したが、イタリアンは別次元だ。楽器をクルマで例えると、今までのは高速道路入口でアクセルをベタ踏みしなければ合流できなかった軽自動車だった。しかしイタリアンだとアクセルをスッと踏むだけで軽く他の車を追い抜いていく4000~5000cc の大排気量車(アントニオさん談)のよう。なのに扱いにくさも神経質なところもない、ストレスフリー。

いつも試奏するだけして買わなかったけれど、今回は即決。アントニオさんに25年以上前に初訪問した時、中国製のパッカリ割れたポンコツ楽器でも丁寧に修理してくれて、「いつかここでちゃんとした楽器を買おう」と心に決めていたし。いつ買うの、今でしょ!

ちなみに25年前の楽器と聞いただけで、ラベルというか製作者も見ずに買った。mezzo って奴はビンボーなクセにたまに値札も見ないで買うところがあったりする。だからビンボーなのかも知れないが。

家に持って帰って老眼鏡をかけてようやくラベルを確認すると、アンドレア・ソルツィ(Andrea Solzi)作、クレモナ・1995年製だった。ネットで調べてみるとアンドレア・シュッツ(Andrea Schudtz)氏がクレモナに構えている工房に所属するヴァイオリン製作者らしい。

EU連合などヨーロッパでは、外国から半製品を輸入しても、自国で組み上げて仕上げると自国製と名乗ってよいとの事。だから中国などで大量生産したヴァイオリンの半製品(ホワイト・ヴァイオリン)を輸入し、イタリアで調整してニスを塗って Made in Itary を名乗る楽器も少なからずあるらしい。30万程で買えるイタリアンはそういう楽器と聞いたことがある(それでも音はそこそこ良いらしいが)。

しかしヴァイオリンの聖地「クレモナ」製を名乗るには、最初から最後まで職人が一人で仕上げなければならないと、クレモナ弦楽器製作者組合で決められていると聞いたことがある。つまり「Cremona」と書いてあるということは、100%イタリアンで間違いないということ。というか40年近くイタリアの製作者から直接買い付けているアントニオさんが間違うわけがない!

というわけでン十年イタリア語の「中ぐらいに強い」を意味する mezzo forte を名乗って来た私がとうとうホンモノのイタリアンを手に入れてしまった。それも25年熟成もの。Che gioia!

って、イタリア語全然しゃべれんし、ヴァイオリン未だにめっちゃ下手くそだけどな…楽器に負けないよう練習がんばります(小並感)。

P.S. よくネットで「初心者用」なんて書いてある1万円前後の楽器があるが、あんなのクルマで例えると「原付バイクで高速教習」するようなものだから。初心者ならなおさら音出しに苦労すると思う。私は友人からタダでもらった中国製で始めたけれど、すでに25年モノで、アントニオさんがバッチリ調整して20万円クラスの楽器になっていたのでラッキーだった…

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